1993(平成5年)/10/9公開 115分 カラー ビスタ 映倫番号:114041
配給:東映 製作:西友 / 東映 / 東北新社
14年ぶりに娘と再会する父親の戸惑いと、ときめき…。田代まさしが映画初主演でシリアスに挑戦! 繊細なタッチで描かれた伊集院静のもう一つの愛の物語。
同時上映「乳房」
江津佑次、40歳。ある高級ホテルの理髪店に勤める彼も、世間ではそろそろ中年といわれる年である。それなりの収入もあり、一緒に暮らす恋人・可葉子との生活にもこれといった不満はないが、心の片隅には、何故かいつも一抹の寂寛感がつきまとっていた。
ある日、江津の職場に別れた妻から電話があった。娘のみのりが、高校の入学祝いに江津に会いたいと言っているらしい。赤ん坊の時に別れてから14年、一度も顔を合わせることのなかった娘であった。
江津は戸惑いを覚えながらも、そのことを可葉子に打ち明ける。
可葉子にとって、二人の生活に江津の過去が立ち入ってくるのは、寂しかった。しかし、それ以上に骨身を削って、顔も覚えていない娘に送金し続けている江津が、せつなく思えて反対する気にはなれなかった。
同じホテルのベルボーイで野球仲間の高沢は、最近の女子高生は大人の想像以上に乱れた生活をしていると、江津を不安にさせるようなことを言う。
休日を利用して、江津はみのりと待ち合わせをするレストランの下見に出かける。若い娘たちがクレープを食べている姿を見て、江津もクレープを注文してみる。
「ここのクレープはおいしいんだよ」
口にしたクレープの甘さに辟易としながらも、江津はそんな言葉を娘に言ってみたいと思った。
そして、その日がやって来た。小雨の降る日曜、江津は待ち合わせのレストランでみのりを待っている。店内に現れる若い娘の誰もがみのりに思えてならない。
やがて、江津の前に白いコートを着た少女が立った。みのりだ。