1954(昭和29年)/11/30公開 76分 モノクロ スタンダード 映倫番号:1578
配給:東映 製作:東映
継母への義理立てから女だてらのやくざと見せて家を飛び出た火の車お万が、意地と鉄火の丁半三昧にふと抱いた国定一家・板割浅太郎への恋心、息詰まる長脇差出入りに哀恋切々の女心を描いた浪曲時代劇。国定忠治に扮する名浪曲師・広沢虎造の至芸の名調子が全編を彩る。
祭囃子の音が流れる上州・国定村。綱取明神のお祭りで、貸元島村の伊三郎の身内で謙信治三郎の乱暴を見かねた国定一家の乾分が刃物を抜いて一触即発。だが突然、花山車に火がついて燃え上がり、その上には逃げ遅れた幼子が…。その時、群集を掻き分けて一人の酔いどれ女が火の車に飛び乗り幼子を救出した。女の名はお万。名主定衛門の家に生まれながら、父の無理強いで剣術を学ばされ、荒んだ気持ちに生さぬ仲の母と妹おかのへの義理立てが祟って、わが身の自堕落を願っていつしか女やくざに身をやつしていた。そしてこの救出劇でいつしか彼女は火の車お万の異名で知れ渡るようになるが、男勝りのお万でも、あのとき助けてくれた国定身内の板割の浅太郎に心引かれ、女嫌いの浅太郎もお万のことが気になっていた。だがそのお万に色目を使うのが悪貸元島村の伊三郎だった。伊三郎はお万をイカサマの丁半博奕で手に入れようと国定一家の縄張りで賭場を張るが、すぐに仕掛けを見破ったお万に島村一家が長脇差を抜き連ねた時、駆けつけた浅太郎によってお万は助け出され、山路を辿っての帰り道、二人の恋はより一層燃え上がる。だが妹おかのが婿を取って名主の後を継ぐことになり、また島村一家の遺恨返しを退けるために一味を切り伏せ兇状旅に出る浅太郎を見送り、お万も生き方を改め料亭の女中として働くことを誓うのだが、伊三郎の魔の手はおかのの亭主・斉吉に伸びてきた…。