1955(昭和30年)/4/13公開 79分 モノクロ スタンダード 映倫番号:1753
配給:東映 製作:東映
十九の花嫁をめぐる肉親愛を中心に、幸福な一家族にそっと秘められていた愛情、善意の人達によって作り上げた美しき秘密と花嫁の清らかな感傷など、人の心を感動的に描き上げ全女性に捧げた珠玉のホームドラマの傑作。
母常子の愛情の中で弟と共に育ってきた友子は、明るく清らかな女性に成長していった。今唯一の気がかりは、恋人の吉川順次が失業中であることだった。だが、正義漢の順次は友子の誇りでもあった。友子には瀬尾浩三という俳優の伯父がいるが、彼は五十一歳にして独り身で、その昔愛妻を亡くしてからは演劇に情熱を傾けることで寂しさを紛らわしているのだ。実は、浩三こそ友子の本当の父親だったのだ。妻峰子を亡くした時、母を知らない幼児だった友子を抱いた浩三を見て、峰子の姉であった常子が友子を引き取り、母として育て続けたのだ。常子は、自分の息子・良一と同じように友子をひたむきに愛した。だが、いずれは真実を話さないといけない。そしてその時は確実に近づいている…。それぞれの思いが静かな波紋を広げつつあった。友子は順次の兄・吉川孝太郎の経営する大岩書店に勤めていた。孝太郎も二人の恋を温かく見守り、順次の就職が決まれば結婚を許すつもりだ。だが、就職先はなかなか見つからない。浩三は、好意を持ち続けてくれる吉川家に対し秘密を隠し通すべきではないと、真実を告白した。暖かく受け入れてくれる孝太郎と順次に涙する浩三。だが同じ頃、友子は常子の膝に伏しながら、思いがけない真実を聞かされていた。だが、自分達をずっと影から支え続けてくれた浩三の真意を思い、友子は「お父さん」とは自分からは決して呼ぶことは出来ないと悟った…。