1960(昭和35年)/1/9公開 59分 カラー シネマスコープ 映倫番号:11524
配給:東映 製作:東映
東千代之介×里見浩太朗の豪華顔合わせによる明朗娯楽大作。緋鹿ノ子城六万三千石の安否を握る秘宝孔雀の兜、謎を秘めた九官鳥をめぐる正邪入り乱れての激闘を描く剣と恋の痛快篇。
ある夜のこと、森藩・緋鹿ノ子城の宝物蔵から伝家の重宝「孔雀の兜」を盗み出そうとした一団があった。しかし、折よく見廻り中の蔵番士・里村隼人の奮闘により、兜は奪い返され、兜奉行磯貝帯刀の許に届けられる。<BR>計り事破れた一団は帯刀を襲うが、兜の行方は判らず、娘の小夜を人質に引揚げた。
帯刀は、兜を隠すとその所在を小夜が可愛がっていた九官鳥に教えると夜空に放ったのであった。
「孔雀の兜」とは、城主播磨守の先祖が、大阪夏の陣の功により家康から賜ったものだが、老中・松平伊豆守の外様大名取潰し政策のひとつとして、伊豆守の命を受けた一色主水ら手の者が緋鹿ノ子城に潜入、家老の赤松内膳と結託して兜を奪い、藩の取潰しを企んでいたのである。
急を聞いて帯刀邸にかけつけた隼人は、帯刀の死体のそばに居る不可解な浪人者を見た。「兜は、九官鳥が知っている」浪人者の言葉に、さっと緊張する隼人。だが九官鳥を追って殺到した主水ら一味を浪人者は相手にし、隼人を逃がすのだった。
「孔雀の兜」紛失に騒然たる緋鹿ノ干城に、将軍の兜上覧の報がもたらせられた。定められた期日迄に兜を差し出さねば森家は断絶である。
江戸上屋敷から、屈強の若侍たちが国許へ派遣されたが、道中伊豆守の隠密団に次々と倒される。国許でも九官鳥を求めて主水一派、隼人、それに強精長寿の薬にと百両の賞金をかけた好色な田舎大尽、これに欲をはった女スリお柳と相棒の安ンベと、まんじ巴の争奪戦が演じられていた。小夜を慕って舞い下りた九官鳥を捕えた主水は、小夜を責めて兜の在り場所を知ろうとするが、突如現れたあの夜の浪人者・葉上小源大の豪快な太刀さばきに翻弄され、あまつさえ小夜を奪われて切歯するのだった。
小夜の手から放たれた九官鳥は、隼人からお柳へ、そしてお柳の手から逃れて再び大空に姿を消した。小夜は村の森で、九官鳥の“くろ”を発見するが、一瞬早く“くろ”は鳥刺し少年・万吉に捕えられてしまう。万吉は小夜の願いも聞かず両親の医者代にすべく賞金欲しさに主水に届け出た。
主水は約束の賞金を渡さずず“くろ”だけを手に入れるが、再び登場した小源太に取り返され万吉に渡された。その万吉に迫る主水一味、取られるくらいならと、万吉は“くろ”を空に放してしまった。
伊豆守は、兜の行方が不明なため一拠に事を運ぼうと、播磨守に刺客を送るが失敗。兜献上を三日後に控え、伊豆守らの奸策を知った播磨守は激しい闘志を滾らせるのだった。
“くろ”は江戸屋敷から潜行してきた梓と居合せた隼人に捕えられ、小夜に秘密の隠し場所を教えた。場所は“月宮”。しかし、その秘密は忍んでいた主水の部下に聞かれてしまった。
紫色の夕霧に包まれた月宮の拝殿に、主水一味が押し寄せた時、拝殿の扉が開き、金色燦然たる「孔雀の兜」をささげた隼人と小源太が現れる。「馬鹿者奴、森藩に伝わる孔雀の兜は、その方たち逆臣の手に渡るものではない」殺到する主水らに「柳生流活殺の剣」小源太の剣が、夜気を裂いて血煙りをあげる。 急遽国入りをした播磨守は、内膳らと対決するが多勢に無勢で次第に危地に追い込まれる。だが危機一髪、突如内膳一味がどっと崩れた。「おお小源太」歓喜する播磨守を前に、小源太玄妙の柳生流秘剣が内膳一味をことごとく倒した。小源大は、播磨守に頼まれた新任の森藩指南役だったのだ。暗雲晴れた緋鹿ノ子城。播磨守の後に馬上兜を捧げる隼人、悠々と手綱をとる小源太、兜献上の一行に随う小夜の膝に“くろ”が嬉々として戯れていた。