1960(昭和35年)/6/21公開 145分 カラー シネマスコープ 映倫番号:11716
配給:東映 製作:東映
10歳にして寺の住持となり、19歳で比叡山を下り、遊学を志す親鸞。吉川英治の原作を得て、恋を感じ悩みを知る波瀾の青年期を描く。
戦乱の世、清盛亡き平家に追討軍を起こす頼朝、義経を従兄弟に持ち、藤原範網に育てられた十八公麿(後の親鸞)は幼くして青蓮院慈円僧正の許で得度、ほどなく比叡山に登つて、暗斗と嫉妬の渦まく世界で苦難の修業を積んだ。
十才にして一寺の住持となり、十九才で比叡山を下り、なおも遊学を志し、従僧性善坊と共に大和法隆寺の学療で究学にいそしむ親鸞の許へ、恋に陥ちた実弟・朝麿(後の尋有)と刀鍛冶の娘・梢が救いを求めてきた。病床に伏す朝磨は木賃宿で野武士風の男の温情を受けたが、彼こそは、稀代の盗賊・天城四郎だったのである。
未来の幸福を信ずる二人を伴い、学を終えた親鸞が京に戻る途中、盗賊の正体を現わした天城一味に梢を奪われ、失意の朝磨を京に送り、ひとり磯長の叡福寺に籠る。
七日七夜の参籠の末、先人の残した壁文を見て、衆生と共に生きることに我が身を救い、衆生を救う道を強く感じた親鸞は、三年間、風と雨と嵐の中を苦行の世界にさまよって再び青蓮院を訪れ、僧正の実兄・月の輪関白・藤原兼実の娘・玉目姫を知った。
玉目は美しい瞳を特つ姫であった。その瞳に魅せられ、妖しくわななく胸をおさえて、親鸞は再度叡山に登り、無明の世界を歩むことを決意する。
叡山での親鸞は、学問の上に於いて大きな存在となった。
ほどなく帝より少僧都の位を授けられ、東山壁光院の門跡に補せられるが、或る夕、加茂川のほとりで野党に襲われていた女を救う。それは遇然にも玉目姫であった。
その夜以来、彼女は親鸞にとって忘れることが出来ない人となった。やがて、夜の闇にまぎれて姫の屋敷に忍ぶ親鸞の姿が見られるようになった。
親鸞自身、仏徒として、噺愧と自責の念に湛えられず、心に笞を打ってはみるものの、煩悩は消え去らない。
親鸞は叡山に逃れようとした。それを追う玉目姫に魔手を伸ばす天城一味の頭上に、いつしか親鸞の竹杖が唸りを立てていた。草と木が、親鸞と共に無明の世界に包まれ猛り狂っていた。
「親鸞」シリーズ(2)