1961(昭和36年)/5/3公開 62分 モノクロ シネマスコープ 映倫番号:12239
配給:東映 製作:東映
里見浩太郎が神出鬼没正義の鞭をふるう怪人まだら頭巾と、洒脱な旗本雪路弦四郎の二役で活躍するニュー東映痛快時代活劇二部作である。第一部「怪人まだら頭巾」は、麻薬密輸団、第二部「紅ぐも地獄」では、大塩事件の残党紅蜘蛛党を相手に、波乱万丈の物語が展開される。出演者は里見浩太郎をめぐって、扇町景子、三原有美子、円山栄子、水木淳子、霧島八千代らの女優陣が顔を揃える多彩な配役である。
第一部「怪人まだら頭巾」
雪踏弦四郎は、直参二百石の旗本だが、放蕩無頼のために御徒町の屋敷は荒れ放題、だが堀留の目明し、万吉の智恵袋となってやったり、ヤクザだった蝶次を堅気にしょうと居酒屋に口入れをしてやったりする。義侠心に富んだ若者でもある。亡父の親友朝倉孫太夫は、娘千絵と添わせようとするが、その放蕩ぶりに愛想をつかし千絵の懇願にもかかわらず破談を申し渡した。折も折、江戸市中は麻薬患者の殺害事件が続出する。そしてその殺害現場かちは、必ず浄海院の小さな護符が発見された。
一方、元長崎奉行松平図書頭が麻薬密売の疑いで処罰され、その遺骨を息子の伸二郎と、用人河村十内とが館山に納骨しての帰り道に、黒覆面の賊に襲われるが、この危機を怪人まだら頭巾の鞭によって救われる。弦四郎と目明しの万吉は、麻薬患者の殺害事件に関係があると睨んだ浄海院を洗ってみたところ、将軍家側室お咲の方の息が掛っている事を知った。又、蝶次の知らせで麻薬のために殺された者達は美船という船宿で、極楽部屋への手引きをうけ、回船問屋の備州屋、出島屋がそれぞれに絡んでいる事も知った。
千絵の計らいで金を懐にした弦四郎は、蝶次を連れて、美船で三日三晩飲み明かしながら、極楽部屋への誘いを待った。そこへ手引きの出島屋が現われ、紀州の材木問屋になりすましている弦四郎を極楽部屋のある浄海院の納骨堂へ案内する。極楽部屋とは、もうもうと立ちこめる阿片の煙に、没我夢幻の境地にひたっている麻薬患者連がうごめく、さながら地獄絵を見るような場所だった。しかし極楽部屋に乗り込んだ弦四郎、浄海院住職浄寛の鋭い眼によって正体を見破られる。出島屋、住職・浄寛らは、弦四郎を極楽部屋に閉じ込め、斬り殺そうと企むが、彼らの背後に現われたのは怪人まだら頭巾。だがまだら頭は浄寛の奸計で極楽部屋に閉じ込められ、一味の黒覆面の一団の襲撃に危機に陥るが、忍んでいた蝶次の手引きで脱出する。極楽部屋に足のついた事を知ったお咲の方の兄、典堂は麻薬の証拠を消すために浄海焼き払い、回船問屋を斬り殺すことを手下共に命じる。
一方弦四郎は、伸二郎に父の仇を討つために、典堂の邸に亥の刻と同時に斬り込むように約束し外に出て行く。まだら頭巾は、万吉に典堂の手下によって傷つけられた出島屋を麻薬事件の証人として引き渡した。又火を放たれた浄海院は、阿鼻叫喚の巷と化し、麻薬患者はまだら頭巾の手によって救い出された。伸二郎は父の仇を一刻も早く討とうと、弦四郎と約束した時刻より早く典堂の邸に乗り込み、典堂らと対決する。浄海院の麻薬患者を救い出したまだら頭巾は、亥の刻の鐘の音を聞き馬を急がせた拍子に懐から例の鞭を落してしまう。それを物陰から出て来た千絵に拾われる。一足遅れて典堂の邸に駈けつけたまだら頭巾、蝶次は、苦戦する伸二郎を助け、典堂らをきし、見事図書頭の恨みを晴らした。千絵は拾った鞭を弦四郎に手渡した。その目が意味あり気に笑っていた。麻薬事件の解決した江戸の空は、底抜けに明るく澄み渡っていた。
第二部「紅ぐも地獄」
大塩平八郎の遺児菊江は、父の遺志を継ぎ紅蜘蛛党を結成した。紅蜘蛛党とは幕府要人に贈賄を行い、私腹を肥やす悪徳商人を襲い、奪った金品を貧しい人々に分け与える義賊の一団だが、ふとしたことからこの紅蜘蛛党は決裂してしまう。藤波典膳らの一味は党首菊江の意に反して、善悪の見さかいなく殺戮をほしいままにし、江戸市中を恐怖の闇に包む。
一方雪路弦四郎は、この紅蜘蛛党の素性をじっと見守り、党の行動次第でこの秘密を曝こうとする。最近南町奉行所 同心高木重三郎の行動から察して、何か紅蜘蛛党に関係があると睨んだ弦四郎は、目明しの万吉に重三郎の尾行を命じる。藤波らの紅蜘蛛党の悪事は益々激しくなり、誘拐した娘と父を死の対面させたりする。この様な紅蜘蛛党の動きに、まだら頭巾は怒り鞭をふりかざして紅蜘蛛党に立ち向って行く。菊江は亡父平八郎の遺志に叛く悪事を重ねる覚員たちに対し党を解散することを告げるが、この時が願ってもない好機であると考えた重三郎は、弦四郎を紅蜘蛛党として仕立て上げ、奉行に訴え様とする。そして紅蜘蛛党が貧しい者達を救うためにためた金をも奪い盗った。更に弦四郎の許婚である千絵までも誘拐し、重三郎らの本拠である古寺に監禁する。一方重三郎は、奉行所に紅蜘蛛党の根城を突き止めたと告げ、直ちに捕手を従え紅蜘味党の本拠に踏み込むが、その時現われたまだら頭巾は、捕手を尻目に菊江を抱えて闇に消え去った。奸計破れた重三郎は手下らの待つ本処に行くが、彼の後をつけていた目明しの万吉は、古寺で閉じ込められている千絵を発見し助けようとするが、重三郎らのために二人は危機にさらされる。間一髪現われたまだら頭巾正義の鞭と、豪剣が邪悪に狂う藤波らを斬り、菊江の手により重三郎ももくされた。暁の海、すべる様に沖へ漕ぎ出す船には菊江達、それをまだら頭巾が見送っている。まだら頭巾の出現しなくなった江戸市中は、何時になく明るく晴れあがっていた。