1961(昭和36年)/7/2公開 94分 カラー シネマスコープ 映倫番号:12413
配給:東映 製作:東映
江戸文学の傑作である鶴屋南北原作『東海道四谷怪談』に材をとり、腐敗と頽廃、色欲と物欲の葛藤に明け暮れる当時の世相を反映させ、一介の下級武士・民谷伊右衛門が追いやられるエゴイズムの極地を追い、妖しく、そして不気味に展開する怪談映画の決定版!
貧乏と堕落のどん底に喘ぎながら、御家人・民谷伊右衛門はいまだ仕官の夢を捨てきれないでいた。恋女房・お岩も無頼な伊右衛門に愛想をつかし父・左門に連れ去られる。そんな中、博奕仲間の薬売りの直助とともに、四谷左門を斬殺し、お岩姉妹を引き取ることに。そして、妹のお袖には直助と仮の夫婦になるように諭す。それから一年、一子を生み、産褥にあるお岩の美貌も衰え、そんなお岩を疎ましく思い始める伊右衛門。ある日のこと、隣家に、伊勢屋喜兵衛という金貸しが引っ越してくる。そして、伊右衛門に意外な相談を持ちかける。一年前の参詣の途中、伊右衛門に一目惚れした一人娘・お梅の願いを叶えて欲しいという。目の前に小判を積まれるが、さすがに即答できず帰宅する伊右衛門。そんな焦燥から、質草を持ち出し、外に呑みに出掛ける。その留守、お梅の乳母・お槇が訪れ、赤子の着物と血の道の妙薬をお岩に与える。伊右衛門は、喜兵衛からその薬が顔を醜く変える毒薬だと知らされ、何事かを決意する。毒薬のため、醜く変貌するお岩。、そんなお岩をなき者にするため、按摩・宅悦に間男しろと脅す伊右衛門。お岩は、薬の効き目に仰天する中、宅悦から伊右衛門の企みを聞き出し、怨みに燃える。狂乱の末、自らが突き立てた短刀で喉を斬り、息絶えるお岩。果たして、祝言の夜からお岩の亡霊がつきまとう。お岩から逃れるために、振るった凶刃が、お梅、喜兵衛と、次々と血を呼ぶ。冬を迎えたある日、お袖が姉・お岩殺しの事実を知り、すべての真相を知る。父と姉の恨みを晴らそうと、雪の降りしきる中、本坊蛇山の庵室に身を隠す伊右衛門のもとへと走る。亡霊に苛まれる伊右衛門を倒し、見事本懐を遂げた時、元のように美しい姿のお岩の亡霊が静かに立っているのだった。