1962(昭和37年)/6/17公開 84分 モノクロ シネマスコープ 映倫番号:12818
配給:東映 製作:東映
幕末の京都に集結した薩摩、土佐、長州の各藩浪士たちの勢力争いを背景に、人間性に目覚めたがゆえに加茂河原の夜つゆと消えた暗殺者の運命を剣と色で描く時代劇。
私の名は志戸原兼作。土佐浪士の武市瑞山、吉岡寅之助らと手を組み、佐幕派の暗殺を企てる勤皇の志士だ。ある夜、我々暗殺隊は、目明し佐平の家に斬り込み、佐平はおろか妻子までをも斬殺した。引き揚げの際、私は戸の隙間から幼い少女が異様な眼差しで我々の行動を見守っているのに気づき、何か後ろ髪を引かれる思いでこの場を去った。それから数日後、田舎侍丸出しの田代新次郎という若い浪士が、私を尾行していた刺客を斬った。私は田代の無法ぶりと勤皇意欲を買い、同志の一員に加えた。傷を負った私は、祇園の裏小路に逃れ、お鶴という町娘に傷の手当てを受けたが、その家では先日佐平の家で見た同じ少女が鋭い視線で私を睨みつけていた。お鶴は佐平の娘であり、暗殺の一部始終を見ていた妹はそれ以来気が狂ったのだ。翌日私は今まで殺した人を供養するために仏像の模写にとりかかったが、筆は思うにまかせず、逆に仏像の目が少女の眼差しに似て見える。つくづく人斬り稼業に愛想が尽きた。一旦、江戸に旅立った私が再び祇園に戻ると、お鶴は新次郎と恋仲になっていた。祇園祭で街は賑わい、私と寅之助が酒を酌み交わしていたとき、幕府の御用商人・嵯峨屋夫妻を瑞山、新次郎、岡田以蔵らが暗殺しようとしていることを聞きつける。私はその場にかけつけ、今更与力などを斬ってもしようがないと制止したが、説得は聞き入れられない。私も脇の刀を鷲づかみにして彼らの後を追うのだが…。