1963(昭和38年)/11/20公開 89分 カラー シネマスコープ 映倫番号:13383
配給:東映 製作:東映
妹を探して十年、旅から旅への途中で拾った少女に妹の面影を見出し、その幸せのために体を張る旅鴉の関の弥太っぺ。全篇にヒューマニズムが溢れる股旅珠玉篇。
初夏の風にゆられて、呑気そうに吉野宿へ向う旅がらす・関の弥太ッペにもくったくがある。十年前に別れた妹・お糸を探しての長旅なのだ。お糸に会った時に渡そうと思っている懐の五十両がやけに重い。桂川の岸辺で急流に落ちた可愛い女の子がいた。お小夜というその子を弥太ッペが命がけで救ったのも、面影が妹に似ていたせいかもしれない。お小夜の父・堺の和吉は盗人だった。ふとした隙に五十両を奪われた弥太ッペが雑木林に追いつめた時、和吉は意外にも涙をみせた。お小夜に五十両を持たせ、お小夜の祖母のいる吉野宿の沢井屋という旅籠を頼って行かせようと、親子の別れをした直後だった。その時、和吉は急にのけぞった。やはり和吉に十両を奪われた箱田の森介という旅人が、お小夜から五十両を奪ってのちに斬りつけたのだ。死の間際に和吉に頼まれた弥太ッペは、一人ぼっちとなったお小夜を沢井屋へ連れていく気になった。やくざ者の弥太ッペの連れて来たお小夜を見た沢井屋の人たちは、一旦は預かるのを断るが、弥太ッぺの熱心さにうたれ承諾する。そして弥太ッペは、お小夜に自分の妹を見出したのか、養育費にと五十両を置いて沢井屋を飛び出した。お小夜が吉野家の孫だと判ったのは弥太ッペが去った後だった。それから十年。顔に大きな刀傷の残る弥太ッペは今や一人一両の相場で殺し屋稼業の荒み切った毎日だった。旅の途中、ひそかに沢井屋へ近づき、美しく成長したお小夜を見て安堵する弥太ッペだったが、十年前の恩人だと称し、しつこくお小夜に言い寄る男が吉野家に居続けていることを知る…。