1987(昭和62年)/11/14公開 101分 カラー ビスタ 映倫番号:112495
配給:東映クラシックフイルム 製作:幻燈社
かつてサーキットで火花を散らした男たちの愛と友情を、「ドラマティック・レイン」「夏のクラクション」をはじめ全編に稲垣潤一のナンバー13曲を織り込んで描く。
2台のF3が連なって疾走し、コーナー手前で1台がアウトコースに出た。抜かせまいと、もう1台がブロックし、猛烈なダッシュで後の車が迫った。激しい競り合いの後、1台は弾かれ宙に舞い、爆音と共に炎上した。-それは一瞬のことだった。
トップレーサーだった伊佐山亘がレースで事故死してから4年の歳月が流れ、岡崎麻子は、伊佐山との間に生まれた娘百合を育てながら、雑誌記者として取材に駆け回る毎日を送っていた。伊佐山のレース仲間だった多田圭一は、今もレースに賭ける情熱を失っておらず、チューニング工場を経営するかたわら、自分のチーム「チョイス」のマシンに手を入れ、秋のレースに出場しようと懸命だった。
麻子と多田、二人の間には微妙な感情が流れていた。お互いに愛を感じながらも、仕事のためには大抵のことを犠牲にしてしまう。そのことを自覚し、口に出して言い合っていることで、距離を置いた静かな愛情を育てている。
そんなある日、「チョイス」のマシンから黒煙と炎が上がり、黒焦げになってしまう。通りかかった男が、手際良く消化してくれなければ、マシンは完全にアウトになってしまうところだった。男の名は福山潤。かつてはサーキットの狼と呼ばれていた。彼こそ伊佐山の事故を引き起こした男であり、その後、レーサーとしてのキャリアも捨てて、今はさえないスナックのマスターをしている。事故にこだわり、償うために、遺児百合が幼稚園に行きだした冬から、名を伏せてクリスマスプレゼントや手紙を送り続けていたのだ…。