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文学賞殺人事件 大いなる助走

1989(平成元年)/1/28公開 129分 カラー ビスタ 映倫番号:112768 
配給:東映 製作:アジャックス

作者自身3回直木賞候補に上りながら、意味不明な選評とともに受賞を逸した経験をもとにした筒井康隆の傑作を映画化。
文学界の陰に見え隠れするスキャンダルの構造と、それに揺り動かされる人間たちの悲喜劇を描き出した鈴木則文監督による異色のパロディ娯楽作。

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ストーリー

日本のどこにでもある平凡な地方都市、焼畑市。その焼畑市一の企業「大徳商事」に勤めるサラリーマン市谷京二は、ある日道端で拾った本が縁となり「焼畑文芸」なる同人誌のメンバー時岡玉技と知り合った。玉技に魅かれると同時に同人誌に興味を抱いた市谷は、試しに書いた一本の短編をたずさえて、同誌の主催者・保又一雄を訪ねた。保又は家業の文房具店を倒産寸前に追い込みながら、同誌の編集長を勤め、当然、妻との口論も絶えなかった。市谷の持ち込んだ原稿を前に保又は「文学は奇麗事ではない。地獄へ落ちることなのだ。云々」と、自らの哲学を披露すると共に、市谷に「文学」への自覚を促すのだった。あっけにとられた市谷であったが、玉技の励ましもあり、もう一度「文学」に挑戦する決意を固めた。そして、保又の助言に従い、「大徳商事」の内幕暴露を題材として取り上げた「大企業の群狼」を奇稿し、次の同人誌仲間の合評会に出席した。保又文房具店に顔を揃えた同入の面々は、定職につかずにふらふらしている文学青年・大垣をはじめとして誰もが一癖ある性格の持ち主であった。合評会も隠やかに進む筈がない。お互いの作品のけなし合い、足の引っ張り合いに終始する有り様。激怒した主婦の山中道子に至ってはバットを持ち出し、あたり構わず振り回す始末。市谷も頭ごなしの酷評に怒りを覚える前に呆れ果ててしまうのだった。数日後、「大企業の群狼」が「文学海」の編集者の目にとまり、同人誌推薦作として掲載されることになり、知らせを聞いた市谷は小躍りして喜んだのも束の間、払う代償も高くつくものとなってしまった。先きを越された同人誌仲間の反感を買うだけならまだしも、内部事情スッパ抜いたかどで会社はクビになるわ、「大徳商事」に大きく依存している市議会の顧問である父親には勘当されるわ、家を出ざるをえない状況となってしまった。そこに一通の封筒が届いた。あろうことか、市谷の作品が文壇の名誉、直本賞の候補作として選出されたとの通知であった。市谷は奮い立った。「俺は必ず『直本賞』を取るッ!どいつもこいつも見返してやるぞ!畜生、必ずやってみせるぞ!!」市谷は決意を固め、玉枝に別れを告げると新幹線に乗り込んだ。
上京した市谷は「文芸秋冬」の編集員から直本賞の世話人、多聞を紹介された。「生き馬の目を抜く文壇の世界では、何はきておき根回しが最も肝心である。特に『賞』がかかってくる場合には」上京前に「群盲」の編集長牛膝からも忠告を受けていた市谷は、何もかも全てを投げうつ覚悟で、多聞の言葉に耳を傾けた。選考委員の鰊口冗太郎は受賞者にラリパッパの自分の娘を押し付ける。雜上掛三次は男色家、坂氏疲労太は人妻との不義密通好き、海牛綿大鑑、明日滝毒作、膳上線引らには大金が必要。この内最低半分以上の要求をクリアしなければ、他の候補作との兼ね合いもあり、入賞は非常に困難になるという。市谷は、各委員の家を訪れ土下座を重ねると同時にオカマを掘らせ、また、上京きせた玉技を抱かせ、500万の貯金を全てリベートとしてつぎ込んだ。市谷の頭の中には「直本賞受賞」、その言葉しかなかった。そしてついに、選考の日がやってきた。魂を失った人間のように虚ろな目をした市谷。その部屋は受賞の瞬間の取材に訪れた報道陣でゴッタ返していた。電話がなった。受話器をとる市谷。緊張の一瞬。受話器の向こうから聞こえてきたのは・・・。

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