1948(昭和23年)/3/20公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
中野泰介の企画で、依田義賢と森田竜男の協同脚本を小坂哲人が監督する。撮影は滝花吟一が担当。主演は安部徹、花柳小菊、その他に河村黎吉、名越宏彦らが出演する。
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正純は父法竜寺住職了念の反対も聞かず、大阪から浮浪児一平をつれかえった。寺には妹の明子、間借りしている画家の木田とその娘蕗子がいる。了念はもちろん、明子も苦い顔をしたが、蕗子は喜んで優しく一平を迎えた。一平は明るい子供の心を取り戻した。とりわけ観音堂の観音様を蕗子と一緒に拝んでから、その観音様が好きでたまらなくなった。正純の理想は、多くの浮浪児を教育することにあって、ある日十人あまりの子供をつれて来た。だが一平は蕗子や正純が新しい子供も一様に愛することをさびしく思った。特に山へみんなと一緒に薪をとりにいったとき、ひねくれて他の子供とけんかして蕗子にしかられ、失踪した。蕗子は心配して捜したがどうしても見つからなかった。木田は蕗子を、パトロン相馬の口ききで嫁にやろうとした。正純も蕗子もお互い引かれる愛情を感じていたので悲しかった。寺の経済状態は火の車で正純は非難の的だった。ある日寺宝調査団が来て観音様を国宝と推薦し時価五十万円の折紙をつけた。正純は浮浪児教育を実現するため売ろうとした。相馬が買いとるというのだ。そのころ一平が再び寺を恋しく思って帰って来たが、蕗子がいってしまうことや、観音様が売られることを聞き、夜になって他の子供と観音様をかつぎ出して山へ逃げた。翌朝大騒ぎとなり、一平らがいなくなったことから、背後にギャングでもあやつっていると思い、村中総動員で山狩りがはじまった。