1948(昭和23年)/9/4公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
小川記正と須佐寛の共同製作で松竹大船の助監督柳沢類寿の原作を八木隆一郎が脚色し、大庭秀雄が演出する。撮影は長岡博之が担当。出演者は原節子、宇佐美淳、山村聡の他東野英治郎、村上冬樹、神田隆が助演。
夜の海上に花火のような機銃の光がきらめいた。木島、片岡、せむしの吉井、負傷した真木に木島の情夫久里子の五人を乗せた密輸船は沿岸警備隊の追跡を逃れたけれども、燃料はあと三十分しかないという。男三人に女一人というあやしい雰囲気の中、機関の停まった船は海上を流れて行く。そして「お母ちゃん、僕ァ死にたくない」といいながら若い真木は死んで行った。真木の死と前後して甲板から「島が見えたぞ」という吉井の声が聞こえる。孤島には「中央気象台黒島特別支所」がある。密輸船の一団は燃料を求めて観測所へ乗り込んだ。観測所の技師天野はじめ武田、鈴木、野口、山根の五人の所員達は直ちに無電で通知のあった密輸船だと見破るが、台風期を控えて任務を完遂したいという天野の願いも聞き入れず、通告を恐れた木島らは無電機を破壊してしまう。そして必死になって破壊を中止させようとした天野は木島に右腕を撃たれた。久里子は天野の手当てをしようとするが、天野はギャングの手当ては受けたくないと断ったものの、久里子のしつこさに負けてしまう。長い間女の体臭から遠ざかっていた片岡は、久里子に目をつけ夜のがけ際で口説こうとするが、木島が現れて片岡はがけ下に突き落とされた。そのころ観測所の風力計は物すごく回転して台風の前ぶれを告げていた。破壊された無線柱の修理も完了して、所員達は台風に備えた。そして天野は無抵抗主義の武田の言葉を押し切って“ギャング四名黒島にあり”と無電を打った。いよいよ台風は島に襲いかかる・・・。