1949(昭和24年)/7/12公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
中野泰介の企画で、梶野真三原作の「鯨の町」より柳井隆雄が脚色し、佐々木啓祐が監督に当たる。撮影は竹野治夫。主演には佐野周二、木暮実千代の他、笠智衆、山村聡、若杉曜子、志村喬、河村黎吉、堺駿二の他、坂本武、飯田蝶子、三井弘次らが出演。
ある港町に向かってバスが青葉の色に覆われた山道を、のぼって行った。その中に木村鯛吉は「漁船甲板読本」のある頁を口の中で繰り返していた。鯛吉は船乗りになるために、この港町にやってきたのであるが、不慣れな土地のために、偶然バスの中で知り合った八雲旅館の娘、静江にいろいろお世話になってしまった。静江は昔、福丸の息子岩田健二と結婚したが、二人の間はうまくいかなかった。そして健二は旅に出てしまった。静江は今では高草丸の船長の海保圭助に少なからず好意をよせている。しかし同じ捕鯨船でも福丸は最新式を誇り、高草丸は古いくたびれた船であった。鯛吉の乗りたいと思った船、高草丸は明日出帆という。無事合格した鯛吉は、八雲旅館で体を休めていたその晩、高草丸の水夫長政長が酒の勢いで船長の海保を、おかみさんのとめるのもきかず、盛んにののしっていた。鯛吉は眠られず「うるさい!」と叫んだ、とたんにけんかが始まって、政長は目にキズを受けた、いよいよ出航した高草丸は鯨を追って幾日か過ごした、鯛吉は油差の音吉や、コックの村田らに教えられながらだんだん馴染んでいった。そして船長の人格の豊富を知った。政長とも馴染みになった、一方福丸は突然帰えってきた岩田を迎えて活気を呈していた。またまた福丸と、高草丸との競争となった。しかし高草丸の船長海保は日本の捕鯨道徳をしっかりと心得ていたが、かえってそれがために我利に走る福丸や、仲間たちに誤解をもってみられていた。それがやがて静江を中心に岩田と海保の争いまで発展していった…。