1949(昭和24年)/10/19公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
小出孝の製作で、竹田敏彦の原作を清島長利が脚色し、家城巳代治の監督第二回作品である。撮影は西川亨の担当。出演者は菅井一郎、津島恵子、美空ひばり、原保美の他、徳大寺伸、神田隆らが助演。
横浜桜木町には風太郎といわれる自中労働者が群がり、浮浪児たちと一緒にあちこち散在していた。田中健三は駅前にぼんやりやってきたが、それは一人の妹ミツコを探す為であった。彼は最近外地から復員してきたばかりで、帰ってみれば家も焼け、ミツコの行方も分からなくなっていた。健三は以前音楽道を志し、ミツコのために「悲しき口笛」という歌を作って戦地に出て行った。今こうなってみるとその歌が唯一のミツコを探す綱であった。そのころミツコは、やはり風太郎と一緒に浮浪の生活をしていたのであった。健三は訳も分からなくなってぶらりぶらりと、あるビアホールで無銭飲食をしたあげく、用心棒にさんざん叩かれたが、この時ビアホールの京子という一人の女性に救われた。この様子をみたある商事会社の吉村が、健三の男を買って代金を払ってくれた上、いずこともなく自動車で連れ去ってしまった。一方京子は父親と二人きりの生活で、家とは名のみのボロ倉庫の中で暮らしていた。父は夢を諦められず、バイオリンを片手に幻想の曲を追っていたが、ほとんど収入はなかった。それでも楽団の仲間を尋ね歩いたが、ジャズのリズムの中にどうしても飛び入ることが出来ない性分であった。ところがある日、ふとしたことから浮浪児のミツコが京子達の生活に仲間入りすることになった…。