1950(昭和25年)/2/5公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
谷屋充の原作から沢村勉が脚本を執筆し、高木孝一が監督する。撮影は竹野治夫の担当。主な出演は佐田啓二、高田稔、入江たか子、青山宏、西條鮎子、田中憲次。企画は中野泰介。
復員して来た湯原恒夫は家庭に帰ってくると、まず大きな変化に直面した。彼の母は、宏という息子のある大学教授水上の後妻として入籍していたし、彼の許婚由紀も戦争中に両親を失い、家を焼かれた結果、家族の一人として引き取られていた。長い間の抑留生活から初めて内地へ帰ってこの異様な家庭の変わりかたに何の用意もなく投げ出された恒夫は、母をうらみ義父、義弟を憎悪し、その人々と親しんでいる由紀へ対しても冷たい眼でみるようになり、温順な彼の性格は一転して、捨て鉢なひねくれた性質に変わっていった。しかし母清子は永い抑留生活で荒れすさんでいる恒夫を真心を持って慰め、元気に再出発させようと努力した。だが、恒夫はその好意さえもはらいのけた。彼は由紀と義弟宏が心をこめて彼のために新調させた洋服のプレゼントも、ひねくれた彼の性格としては侮辱そのものにとられた。そのため宏は恒夫になぐられ、許婚であるからと由紀に挑み、拒まれると宏と由紀の仲のいいことは何かよこしまな事があると、なじりさえした。それでも清子は宏、由紀の嘆きをなだめ出来るだけ恒夫に親切にして一日も早く自分達と仲良く円満な家庭を営むよう、由紀と結婚させようとしていた。義父も彼には同様な考えを持って温かくのぞんでいた。そして恒夫は、街頭で与太者に脅迫されていたダンサー隆子を救った。その日以来、恒夫は就職を探しに行くのをやめて、専ら隆子のいるキャバレーへ通い始めるようになった。