1950(昭和25年)/12/29公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
大林清の原作を長瀬喜伴が脚色し、佐々木康が監督。製作は小倉武志。出演者は高峰三枝子、若原雅夫、徳大寺伸、西條鮎子、山村聡、その他清水一郎、桜むつ子、吉川満子、岡村文子、高橋貞二など。
かつての名門の娘、薬王寺旬子は、リリイ・花園と名のってキャバレーの歌姫となり、母と二人の生活を支えている。昼はW大学の美術科に学んでいたが、キャバレーのバンドマン宮原は旬子のそんな半面の生活は知らず思慕の情をよせていた。しかしある夜彼女をねらっている新興会社の社長三輪に無理に誘われホテルまで同行したのをW大学の同級生に見られ、醜聞をふりまかれたことから、理解ある平野助教授が引きとめたのにも関わらず、資産家の息子穴倉敏明と結婚してしまった。しかし、旬子は結婚は、生活水準を維持する一種のアルバイトだという見解から、夫に肉体の自由を許さなかった。従って名ばかりの夫婦の間は日一日の冷たく、醜い争いがつづいた。そうした時、平野助教授は京都奈良の古美術研究に旬子を誘い、旬子の不自然な結婚生活を清算して自分と結婚してくれるように説くのだったが、京都の宿では計らずも宮原に逢い、旬子の心は一層みだれた。そこへ、事業の失敗その他で自棄になった穴倉もやって来て、醜い争いとなったが、旬子はのがれて母の許へ帰り、自分のあやまった生活を解決する決心をかためた。その矢先穴倉が列車からふり落とされ入院したと聞いて駆けつけるが、夫の傍には秘書の新井俊子が甲斐々々しくつきそっていた。悪夢からさめたような穴倉は、旬子も正しい愛情を求めて幸福になってくれるようにと願うのだった。