1952(昭和27年)/4/24公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
「紅扇」に次ぐ小出孝の製作で、永井龍男の原作『鳩舎』から沢村勉が脚色し、大庭秀雄の監督である。撮影は長岡博之。出演は高峰三枝子と若原雅夫、淡島千景と石浜朗、柳永二郎のほか、村瀬幸子、信欣三など。
有楽町ビルで歯科医をしている末松晶は、父の薦めた結婚に失敗した女性である。夫山口進吉と別れてみて、彼女は幼馴染の従兄池島清紀がずっと自分の心を占めていたことに気がついた。清紀は画家だった。そして立野秋子という愛人があった。しかし彼も晶が一人になったとき、自分が秋子から離れて晶に強く心を惹かれ出したことに気がついた。二人はそのため極力接近することを避けたが、賢明な秋子は清紀の心をとりもどすことの無駄なことを知って哀しく諦めた。画の仕事で蒲郡へ行っていた清紀から急病の電報が晶の許へ届いた。晶は夢中で清紀のところへ駆けつけた。それは自分のためへの遠慮から恋をためらっている清紀と晶とを結びつけてやろうという秋子の優しい心使いから打たれた偽電報だった。その頃秋子は清紀へ手紙を残して神戸への車中にあった。二人の恋の成就を祈りながら…。