1952(昭和27年)/9/24公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
製作は久保光三。長谷川幸延の原作から津路嘉郎が脚色し、萩山輝男が監督に当っている。撮影は斎藤毅。主な出演者は高橋貞二、水原真知子、井川邦子、市川小太夫と吉川満子、他に坂本武、岩井半四郎、増田順二など。
薬種問屋「山長」は老舗だったが華やかな新薬の宣伝に押され、当主長兵衛は中北製薬からの借金を苦にして死んだ。娘綾子は、大番頭徳平の息子正太郎と相談して店を株式会社に改め、自ら社長となり、昨日までの丁稚は洋服を来て社員ということになった。綾子と正太郎の接近を、綾子に野心を持つブルジョアのドラ息子菅井は喜ばなかったが、女店員の千代も正太郎の幼馴染で彼に心を寄せていただけに心淋しく思っていた。新しい組織になっても「山長」は相変わらず苦境にあり、正太郎は男気のある中北製薬社長の助けを借りようと主張したが、綾子は中北を父の仇と思い込んでいてそれに反対した。そして万策つきたあげく、綾子は正太郎に無断で菅井に援助を頼むため川奈ホテルへ訪ねて行った。菅井にとっては思う壺であった。彼の毒牙のため綾子危うしと見えたとき、ようやく事情を知った正太郎がとび込んで来た。綾子は初めて素直な気持ちで中北の力を借りる決心をした。その綾子に中北は「女になってすべてを正太郎に任せなさい」と忠告した。今は正太郎を思いあきらめた千代には、松造という親切な慰め手が現われ、「山長」の店は、二組の若い恋人同志によって一層の明るさを増した。