1953(昭和28年)/3/5公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
製作は市川哲夫。甲斐克彦の『小説倶楽部』所載の原作から沢村勉が脚色、大曽根辰夫が監督に当り片岡清が撮影を受け持っている。主な出演者は鶴田浩二、大木実、高千穂ひづる、月丘夢路など。
「鷹」と呼ばれる若い全日本柔道選手権保持者志麻次郎五段は、柔道使節としてフランスへ旅立つまで、九州N市の母校城南高校の柔道部を指導することになった。同校の柔道部教師藤崎公造は志麻の恩師で、その娘幸子は彼の許嫁であった。志麻との試合で途中棄権した西軍の勇将関七段の高弟川内柳之介は、志麻に試合を申し込んで断られた。志麻は藤崎から固く試合を禁じられていた上に、幸子が志麻と結ばれるのを知って酒色に身をもちくずしている相弟子の加藤勇作を更生させようと努力していた。その加藤の妹で酒場に働く翠を川内は暴力で征服した上に、暗夜、街の土建屋一味に襲われた彼を救って肩に負傷した志麻に、再度挑戦した。川内はこれも拒絶されると、城南高校で藤崎に試合を申し込んで「鬼殺し」の技にかけてこれに重傷を負わせた。重なる川内の横暴に遂に立った志麻は、負傷の身をもって川内と対峙し、その「鬼殺し」を完全に封じて体を制した。川内を後援する平和建設の壮漢たちが殺気立って志麻をとりかこむが、関七段が不肖の弟子に代わって志麻に詑びる姿にひきさがり、川内も悔恨の涙にくれた。翌日故郷鹿児島に向って更生の旅に出発する川内の傍らに翠の姿も見られた。