1955(昭和30年)/7/12公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
椎名利夫の脚本を尾崎甫が監督する。撮影は坂本松雄、音楽は池田正義の担当。出演者は川喜多雄二、日守新一、清川新吾、藤乃高子のほか、銀令子、沢村貞子、明石潮など。
大学の仏文科を出たというのに二宮和夫は、隣家のお嬢さん大竹勝子にいわせるとボヤッとした時代おくれの青年ということになる。またそう言われても仕方がなかった。七回目の見合いを坪井咲子とすることになったが、年頃の勝子を付き添い人にするというのだから、以前の縁談もこの様な心構えではまとまる筈がなく、しかも元海軍大佐で身体の不自由な父の仙道と二人暮らしとあっては尚更であった。今度も芸術大学で音楽を専攻している才女、加えて美貌の勝子の付き添い人では見合いの結果は始めからわかっていた。今では何の生きる喜びもない仙造は、早く和夫に嫁をと、そればかりを願っているが、何時も縁談がうまく行かないのは、自分が居るからだと思いつめ発狂してしまった。この少し前、和夫は勤めていた楽器店をくびになったため、病気の父を大竹夫妻に頼み、職を求めて奔走するが、なかなか見つからなかった。やっと、未だ好意を持っていた咲子の紹介で、宣伝会社へ入社できたが、咲子の厚かましいアプレ的な態度にたまりかね、友人の計らいで、女社長の秘書になることを決心した。それも、秘書とは女社長の誘惑の口実でしかないことを知った。和夫は、仕方なく宣伝会社のチンドン屋の一行に加わってギターを弾いて歩く。伸び盛りのかほるや厚を抱える大竹家の生活は楽でなかった。そのため、夫妻は四国へ転任しようかと相談していた…。