1955(昭和30年)/8/31公開 99分
配給:松竹 製作:松竹株式会社
木下恵介が松山善三と共同脚色し、木下恵介が監督、楠田浩之が撮影を担当する。主な出演者は高峰秀子、佐田啓二、高橋貞二、中川弘子、小林トシ子、そのほか田村高廣、石浜朗など。なおこれは「初恋」を改題したもの。
林野庁に勤める石津圭三は、北海道転勤のため、休暇をもらって東京から故郷の高山に帰って来た。彼は土地の酒屋豪商石津家の息子で、かつて同じ酒屋の娘寺田冬子と初恋の仲だったが、冬子は金のために市会議員の息子寺田敏彦と結婚、その上夫に死なれて一人娘絹子をかかえ、裕福な婚家で毎日を過ごしていた。駅からの帰途冬子の妹野島時子に会った圭三は昔の想い出に胸迫り、昔冬子から借りたジイドの「窄き門」を手に深い吐息をもらした。そして翌日敏彦の命日、墓前で圭三は図らずも冬子に再会した。だが冬子の義弟の俊介が現われたので言葉少なく別れた。東京へ帰る日が迫って来た一日、圭三は冬子とはじめてゆっくり会うことができた。丁度その留守、俊介は冬子と結婚の意志のあることを父に打あけ、仕事のために金沢へ発った。冬子と会った圭三も、子供をだく彼女の姿に、動いた心を淋しく諦めて家に来ると、北村という男が二人の間を暴露するといって強迫に来ていた。圭三は、身にやましい事は何もないといって追い返すが、母と兄幸二郎は圭三の気持を知り、冬子の父の彌吉のもとを訪れた。その時、冬子も北村によって圭三との間を義父母に暴露され、泣き伏していた。そこへ圭三の妹貴恵子が、一緒に東京へ出てくれという圭三の手紙をもって来るが、彼女は冷たくそれを断った。翌日、圭三は再び東京へ向かうため、駅に来ていた。一度断ったものの、冬子は妹の時子に、「姉さんは自分の心に偽っている、行くのが本当よ」と激しくいわれ、意を決した彼女は圭三を追って切符を買ったが・・・。
毎日映画コンクール撮影賞(楠田浩之):ブルーリボン賞撮影賞(楠田浩之)