1956(昭和31年)/3/4公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
野村芳太郎が脚本監督を兼ね、井上晴二が撮影を担当した。主な出演者は、高橋貞二、三井弘次、北上弥太朗、草笛光子、高野真二、山本和子、紫千代(旧名紫千鶴)など。
十年ぶりで故郷の土を踏んだ旅がらす伊太郎は、網元三の輪秀五郎の家に草鞋を脱いだ。秀五郎の女房おときは伊太郎の昔の恋人だが、今では秀五郎との間に太郎吉という子供がいる。秀五郎は隣の宿場の顔役久瀬の熊吉が二足草鞋で勢力を張り出してからは押され気味で、その晩も熊吉は苫屋の鎌吉をおどかして放火させ、秀五郎は危く地曳き網を焼かれるところだった。あくる日、秀五郎の留守中に鎌吉はつかまったが、秀五郎の妹おちよの鎌吉に対する深い愛情を知った伊太郎とおときは、十年前の自分たちを思い出して二人を逃がしてやるのだった。ふらりと家を出た伊太郎は、亡父から店を譲り受けて港屋という居酒屋を営んでいる与平を訪ね、自分が飛び出したあと、おときが身を投げようとして秀五郎に助けられ、半年後に祝言をあげたことを知った。伊太郎は太郎吉が自分の子のように思えてならない。熊吉に呼び出しをかけられた秀五郎は港屋で危地に陥ったが、伊太郎や与平の気転で助かった。その帰途、伊太郎は秀五郎から、何もいわずに旅に出てくれといわれ、暗い気持だった。だが熊吉から喧嘩状を受け取った秀五郎は、伊太郎に、もし自分が死んだら、おときと太郎吉ぐるみ三の輪の跡目をついでくれと頼んだ。伊太郎はとめるおときを振り切って熊吉一家に殴り込みをかけ、与平と太郎吉の見ている前で熊吉らを斬り伏せた。