1956(昭和31年)/3/11公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
サンデー毎日連載の井上靖の小説『魔の季節』を斎藤良輔が脚色し、岩間鶴夫が監督。撮影は中島信雄が担当した。主な出演者は、淡島千景、山村聡、田浦正巳、田村高廣、新人杉田弘子など。
伊吹三弥子の良人卓二は大学教授だが、研究以外のことには無関心で、家庭を顧みようとしない。そんな夫婦生活に我慢しきれず、気晴らしの旅に出た三弥子はある海岸で、失恋の傷を癒しに来ている風見竜一郎と知り合った。海に向かって絶叫する風見の姿は、彼女にも何か通じるものがあった。三弥子が帰京すると、卓二は学生の坂本たちと富士五湖調査に出発するところだった。一方、これも旅から帰った風見は銀座裏の事務所で、映画女優桂伸子の失踪を知った。伸子こそ彼に失恋の苦汁を舐めさせた女である。本栖湖の流出口工事場で卓二や坂本たちが調査をしていると、突然現われた伸子は見ず知らずの卓二にかくまってくれと頼んだ。卓二は伸子が有名になりたいため狂言失踪をやったと聞いて、全然別な世界の人間に会ったような興味を覚え、伸子も卓二に心を惹かれるのだった。風見は卓二が三弥子の良人だと知り、自分の発電事業にぜひ卓二の研究が必要だからと協力を依頼するが、風見を単なる利権屋と誤解した卓二は相手にしない。湖畔の宿を根城に調査を続けるうち、卓二と伸子は遂に越えてはならぬ垣を踏み超えてしまった。同じころ、三弥子も風見の人間性に触れ、加えて良人と伸子との関係を知るに及んで、二度と家へ戻らない決心を風見に打ち明けた。