1956(昭和31年)/6/22公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
鼠小僧次郎吉を主人公とする時代娯楽篇。永江勇と森田竜男が共同で脚本を執筆し、倉橋良介が監督した。撮影は服部幹夫。主な出演者は北上弥太朗、紙京子、雪代敬子、三井弘次、他に若杉英二など。
江戸の侠盗鼡小僧次郎吉は上方に潜んで一年、飴屋に姿を変えて堺の港町に現われたが、薬売りに化けて彼を追う江戸の目明し明神の丑松と、お互の身分も知らず近づきになり、舟宿万字屋で盃をくみ交した。宿の女将おちせは元柳橋の芸者で、今は廻船問屋紀伊屋藤左衛門に落籍された身の上だが、彼が土地の親分竜神の辰五郎と手を組み、よからぬ仕事をしていることに不安を感じていた。悪棘な辰五郎はその夜、入江の倉庫で藤左衛門を斬殺した。そこに通り掛った次郎吉と丑松は竜神一家のならず者に襲われ、次郎吉は傷ついた丑松をおちせの許で介抱する折、懐中の十手を見て愕然とした。堺の年中行事である夜市祭の当日、次郎吉は竜神一家に因縁をつけられた旅芸人お菊と宗太郎姉弟の難儀を救い、その男らしさに慕かれたおちせと茶店で語り合う。だがそこへ現われた丑松から“鼡”がこの地にいるらしいと聞き、おちせが鼡小僧の押入りで財産を傾けて自殺した豪商の娘のなれの果てと知った次郎吉はその場に居たたまれず外に飛び出した。その夜、入江の倉庫には辰五郎の手によって秘かに御禁制の品が運び込まれていた。丑松から、お菊姉弟が鼡をおびき出す囮に、辰五郎に誘拐されたと聞いた次郎吉は一先ず万字屋へ戻るが、その様子から、おちせは次郎吉の正体を知って驚く。大阪奉行本多帯刀の尋問で、おちせは遂に次郎吉の身分を明かし、竜神一家から姉弟を救い出した次郎吉は御用提灯の波に取り巻かれた…。