1956(昭和31年)/10/24公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
豪放痛快、一代の反逆児八代将軍吉宗の若き日を描く娯楽篇。新進渡辺哲二の脚本により、酒井辰雄が監督、竹野治夫が撮影を担当する。主な出演は中村賀津雄、中村芝雀、アチャコ、近衛十四郎、高野真二、朝丘雪路、その他山鳩くるみ、高木悠子、市川春代など。
紀州徳川の次男坊源六郎は、父光貞の厄年に生れたため乳母お浜の手で紀州家とは無縁に育った。だが十一歳の折、身の素姓を知った彼は無情な父母に怒り、お浜を実の母として偽りなき世界に生きようと決意。以後、城下外れの円妙寺に移り住んだ源六郎は紀州の暴れん坊と異名をとるに至る。源六郎十七歳の時、兄に当る城主頼職は病床に伏す。光貞は主席家老本間主水、お守り役加納将監らに源六郎帰城を説かせるが彼は動かない。紀州を離れて暮そうと考えた源六郎は一日、近習左近を伴いお浜を訪ねる。だが彼の大成を望むお浜は将監や住職俊海の心中を察し、置手紙を残し姿を消していた。お浜を探して伊勢松坂へ赴いた源六郎は、不漁に苦しむ漁夫のため公儀禁断の海域に網を入れ、山田奉行大岡忠相に不心得を戒められる。虫の納まらぬ彼は和歌山へ戻るや忠相を呼び寄せ詑びを迫るが、彼の態度に感服。一方忠相も源六郎の秀でた素質を認める。暴れ若君に手をやく将監は一策を案じ、家臣磯野半左衛門の娘珠江をお側女として心境の変化を計る。だが珠江には初頼東馬という真影流使い手が恋人。源六郎は二人の仲を察し、珠江を去らせる。城中では当主頼職の病重く、主水は分家の光千代を当主にすべしと主張、しかし光貞夫婦は源六郎にあく迄望みを捨てない。その頃、源六郎は伊勢海岸で、似た境遇の海女おいくと日々を過す中、村の祭礼の日、お浜をみつけ喜んで円妙寺へ連れ帰る。そこに待つ光貞夫婦に見向きもせぬ源六郎は突如、悪事を企む主水の用人赤山平太夫の甘言に乗った覆面姿の東馬に襲われる…。