1957(昭和32年)/2/6公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
大木実を中心に誕生した俳優グループ“すがを集団”が、京都映画と共同製作する第一作。廓の生態を新しい角度で描く人情篇。脚本はの関沢新一と内川清一郎の共同、内川清一郎が監督、平野好美が撮影にあたる。主な出演者は大木実、高千穂ひづる、山田五十鈴、小山明子、田崎潤、浪花千栄子、水原真知子、ほかに宮城千賀子、田中春男、永井智雄、佐々木孝丸、阿部九洲男、高屋朗、青山宏など。
晩秋の京都。終戦時に闇市のもつれから廓に放火した地ゴロの大和田を斬った通称鉄こと宮鉄太郎が八年の刑期を勤め上げ、七条新地の牧組一家へ戻ってみれば、親分は死亡、当主孝市は堅気の生活に入り、子分らは新興の陣場大吉の許に奔り、牧組の縄張りを蚕食していた。痛憤する鉄太郎を慰める利美楼のおかみ、お浪。娼妓時代同輩だった鉄太郎の母の死後、親同様に育てて来た義侠肌の彼女が、一人前の男なら女も欲しかろうと抱え妓の中から選んだのがみどり。若い二人は早速大喧嘩をしてしまうが、牧組再建に努力する鉄太郎の姿に、いつとなくみどりは心惹かれてゆく。鉄太郎は、かつての叔父貴分橋善を宰領とし、旧身内を集めて心中を披瀝したが総ては徒労。耐まりかねた鉄太郎は親分源吉の墓前で縁切りを宣言、陣場一味と対決する。だが利美楼まで投石され、怒って陣場事務所に乗り込んだ鉄太郎も、みどりの知らせで駈けつけた森刑事に止められては万事休し遂に九州落ちを決意。お浪の抱え妓栄子は過労が因で病床に伏し、みどりが貯金全部をはたいての看護も及ばず死去。自らの腑甲斐なさを恥じた鉄太郎は、陣場の秘密賭場で荒稼ぎの上、みどりとの新生活を夢みて利美楼に戻るが、彼女は栄子の遺児健一共々、陣場の許に連れ去られていた。