1957(昭和32年)/11/26公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
きだみのるの『気違い部落周遊記』『気違い部落紳士録』『霧の部落』『奥様騒動記』『日本文化の根底に潜むもの』など、一連の“気違い部落”ものを原作に、菊島隆三が書いたシナリオを渋谷実が監督した社会喜劇。撮影は長岡博之。主演は淡島千景、伊藤雄之助、石浜朗、新人水野久美、伴淳三郎。解説者として森繁久弥が登場する。
東京からわずか十三里半の所に“気違い部落”がある。といっても気違いが住んでいるわけではない。貧乏な中で色と欲をむき出しにした農民生活が“気違い沙汰”にみえるので人々はこう呼んでいる。機屋の因業親爺良介、高利貸又一、この二人の親方を中心に十四世帯の部落は統一されている。親方の権力は絶対で、部落の掟は国の法律より優先することさえあった。ある日、頑固者の鉄次は、昔祖父が部落に寄付した神社の境内がまだ登記されていないのを知って、自分の土地だと縄張りをして耕しはじめた。親分連は鉄次の暴挙に腹を立てたが、彼は平気だった。良介一家は鉄次とのつきあいを断った。何でも屋の三造夫婦も、酒好きの仁太、自転車屋の助夫、鉄次の伯父甚助までもこれに加わった。結局鉄次の家は村八分にされてしまった。これに一番困ったのは鉄次の娘お光だった。彼女は自家の敵良介の息子で東京へ出稼ぎに行っている次郎と恋仲であった。駐在さんの骨折りも一切無駄だった。お光は肺病になり、部落に帰って来た次郎に頼まれた駐在はストマイを安く買ってやった。お光は一時はよくなったが、冬を迎えてポックリ死んでしまった。鉄次が薬代のもとを取ろうとして、残りをヤミ売りしてしまったからだ。誰ひとり弔う者もない寂しい葬式の翌日、家出して東京に発つ次郎はいい働き口があると鉄次を誘った。
毎日映画コンクール撮影賞(長岡博之):毎日映画コンクール音楽賞(黛敏郎):毎日映画コンクール男優助演賞(三井弘次):ブルーリボン賞脚本賞(菊島隆三):ブルーリボン賞男優助演賞(三井弘次)