1961(昭和36年)/9/9公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
山根優一郎の脚本を酒井欣也が監督した、寛美のサラリーマンもの。撮影は竹野治夫が担当している。
四国徳島の大興行師忠治親分の息子、鳴門太郎は、五歳で母と生き別れ十二歳で父と死別、その後乾分の常吉に育てられ、今では羽衣紡績大阪支社に勤めていた。太郎は沢村部長に可愛がられ、小林三平とその妹道子という良き友があった。多角経営を目指す会社は、大阪の南にサービスセンター建設を計画するが、商買仇のセントラル紡績でも同じ計画があり、大キャバレー「ムーラン・ルージュ」の買収をめぐって争奮戦が展開された。ムーランの経営者古川信子は、女手一つで事業を成功させた夜の女王で、トヨ子という美しい娘があり、その娘を市会議員成瀬の息子健一と結婚させようとしていた。セントラル紡績の顧問が成瀬とあって、セントラルの宇野、藤田は断然有利であったために、太郎はいつも後手後手とまわり、買収はセントラルに決まりかかっていた。ちょうどそんな時、太郎の育ての親常吉が、五年の刑期を終えて出所して来た。常吉はそこで太郎のションボリした姿から、仕事の話を聞き出し、買収の件は俺にまかしとけと大見得を切った。翌日、常吉は太郎を引っぱって信子を訪ねた。常吉は信子の顔をみたとたんに逃げ出した。信子は太郎が五歳の時に生き別れになった母だというのである。太郎は買約の契約もそっちのけで、信子が母であることを確かめようと信子を一人で訪ねた。これを知ってあわてた藤田と宇野は信子に、太郎の話はウソで、信子の財産を狙ってのインチキ話だと中傷したため、太郎と信子の間はメチャクチャになってしまった…。