1961(昭和36年)/11/22公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
朝日新聞に連載された円地文子の新聞小説を八住利雄が脚色。五所平之助が監督した恋愛心理ドラマ。撮影は木塚誠一が担当している。
アメリカ留学を終えた吉見藍子は、帰国してから国際社会福祉協会に勤め社会事業に打ちこんでいた。その関係から彼女は、旋盤工の兼藤良晴を補導しながらその更生を願っていたが、良晴は彼女に一途な思いを寄せていた。しかし藍子には、アメリカで結ばれた電力会社の有能な技師立花研一という恋人があった。藍子の母克代は家政婦紹介所を営み、妹の紅子は高校に通っていた。勝気な克代は子供達に父親は戦死したといっているが、夫の周三は杉電気の社長として実業界の大立物であった。藍子と紅子はふとしたことから父のことを知った。20年前--克代の父に望まれ彼女と結婚して吉見農場の養子となった周三は、老人の死後、老母や兄夫婦の冷たい仕打ちに家を飛び出してしまった。周三を愛する克代は彼を追って復縁を迫ったが断わられ、克代は無理心中を図った。だが、二人とも生命をとりとめたのであった。藍子は自分の体の中に母と同じ血が流れていることを知った。その頃、立花には縁談が進められていた、化粧品会社を経営する未亡人香月藤尾の一人娘苑子との話である。ある日良晴は、藍子が自分に寄せる好意を、男女の愛情と勘違いして藍子に迫ったが、藍子に突き放されてしまった。それからの良晴の生活は荒れた。その結果が、夜の女を殺害するという暗黒の地獄に落ちこんでしまった。一方、立花は藤尾との結婚のために藍子との関係を清算しようとしていた。立花のアパートを訪れた藍子は、眠っている立花の枕元からの手紙でそのことを知り、立花を殺そうとするが、どうしても殺すことができなかった。傷心の藍子は、父のところに飛びこんでいった。翌朝、杉の知らせで克代もかけつけて来た…。