1966(昭和41年)/2/5公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
紙屋五平の原作を「大日本殺し屋伝」花登筐が脚色、長谷和夫が監督した下町人情もの。撮影は小原治夫が担当している。
明治も終わりを告げるころの北陸の港町。ここでは、古くから春祭りの夜におこなわれる“競い太鼓”に勝ったものが、その年の漁場を支配するという奇習があった。その為網元たちは、悪どい手段を策しても“太鼓打ち”の名手を集めるのに狂奔するのだった。網元の港屋三蔵は、近郷一の太鼓の名手で半玉の秀香を水揚げし“競い太鼓”に出させようとしていた。幼い時に両親を失ってから、置屋の養女となり不幸な境遇に育った彼女は嫌々ながらも、この辛い運命に従った。が、その水揚げの夜、静かな外気を破って突如太鼓の音が響き渡った。なぜか太鼓の響きは秀香を魅きつけ、秀香は狂気のように浜辺に走った。太鼓の主はいずこからともなくこの町にやって来た、流れ者与之吉であった。この与之吉の父多三郎は、太鼓打ちの名人だったが、その芸をねたむ者の手で暗殺され、さらにちょうどその時に起こった上人殺しの汚名まで着せられてしまったのだった。与之吉は父の寃罪を晴らし、仇を討とうと、暗い思い出のあるこの土地に舞い戻ってきたのだった。その夜秀香は太鼓の音に興奮して、与之吉にすべてを与えた。一方港屋の若旦那仲蔵は、太鼓打ちの腕にほれて与之吉を港屋の船頭としてむかえた。これを知った港屋に対抗する油屋文吉は、早速秀香を身請けして、与之吉に対抗させようとした。だが秀香はそれを拒んだ。そんなことがあった数日後、与之吉は何者かに襲われきき腕に深傷を負わされてしまった・・・。