1972(昭和47年)/4/15公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
狼のように孤独で凶暴な男が、真摯に女の愛を求め、真の愛を実の妹に見いだし、必死に耐えて生きてゆく姿を描いたストーリー。原作は、立原正秋の同名小説の映画化。脚本は池上金男、監督は舛田利雄、撮影を小杉正雄が担当している。
石津家は鎌倉にあった。退役した少将である当主の武一郎は老後を広大な邸宅で、後妻の雪子と、その間にできた千代子の三人で暮していた。彼の先妻は四人の子を残して早死していた。上の三人は固苦しい父と女中であった雪子を嫌い石津家を出ていた。末弟の文三郎だけが雪子たちを暖かい眼で見、武一郎と心のつながりを持っていた。文三郎は、生来の激しい気質に加えて、父から剣の心と古武士のような生き方を受けついでいたが、大学時代に傷害事件を犯し、学園を追われ、今は酒と女と喧嘩の毎日を送っていた。バー「ポインセチア」のママ、冬子は、そんな文三郎に心を引かれるのだった。ある夜、文三郎はバーでやくざと喧嘩し警察に留置される身となった。そこで親友の宮尾刑事と再会し、彼は手を尽して示談に持ち込んでくれた。示談金は冬子が払った。石津家に帰った文三郎に、千代子は自分の指輪を差し出し、冬子に金を返すように迫った。千代子は文三郎の留置中に冬子に兄と別れるように頼んでいたのだ。文三郎は、無頼仲間の金太と仙公に金の工面を頼み、冬子を訪れた。冬子は文三郎の薄情をなじり、云ってはならぬ事を口にした。「妹さんが好きなんでしょ!」冬子の頬に文三郎の手が飛んだ。冬子の言葉は彼の胸に深く突き刺った。そんな時、「ポインセチア」のホステス、裕江と知り会った。彼女には服役中のドス健というひもがいたが、傷ついた文三郎と裕江は求めあうのだった・・・。