1973(昭和48年)/2/10公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
同名の山田太一原作、NHK連続テレビ小説の映画化。昭和19年、九州・天草を舞台に、出征、それに続く死を間近かにひかえた若者と、その恋人が愛し合い、悩み、つまづきながらも結婚にこぎつけるまでの青春時代のひたむきな愛を描いたストーリー。脚本は熊谷勲、監督は脚本も執筆している森崎東、撮影を竹村博がそれぞれ担当している。
大平洋戦争も敗戦のきざしが見えはじめた昭和19年1月、天草遠見ヶ浦の漁村にも戦時の色が濃かった。土地の国民学校の校長である田宮行義の娘真紀は女学校を卒業したばかりの18歳で郵便局に勤めているが、ひそかに幼馴じみの周一を愛していた。周一は網元・村上家の長男で20歳になったばかりだったが、たくましく一人前の漁師であった。そして周一も美しく素直な真紀を愛していた。徴兵検査で、周一は甲種合格と決まった。半年後に入営を控えて周一と真紀は愛を確かめ合った。周一は既に死ぬ覚悟をしているため、真紀からの結婚の申し出を拒否したものの、真紀のたっての願いにようやく決心し、行義に二人の結婚の許しを乞うた。教え子たちにつねづね「国のために死ね」と教えている行義だが、親として、娘が若くして後家になるのを知りながら結婚を許すことはできなかった。一方、周一の両親周造とキクは行義の反対を知り、息子の気持ちを思って漁労長の鯵河を仲人に立て行義に正式に結婚の申し入れをしたが鯵河も追い返されてしまった。父の説得に手こずっていた真紀は周一にも無断で“許してくれるまで帰らない”と置き手紙をして家出した。そんな時、中年の鯵河にまで召集令状が来た。鯵河は出征前、最後の願いを許して欲しいと行義に再び二人の結婚をたのんだ。ついに、行義は娘の願いを聞き入れる決心をした。