1974(昭和49年)/6/1公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
大東京のド真ン中にある下町を舞台に、貧しくとも人情厚き人々の生活を描く喜劇。脚本は高橋正圀と山田洋次による共同執筆、監督は野村芳太郎、撮影を川叉昂がそれぞれ担当している。
高台に建ち並ぶ住宅街を下っていくと、現代からポツンと離れて、どことなくのどかな古い商店街が、谷底の一画のように続いている。福太郎は玉の湯のおやじ、庄吉は床屋のマスター、善造はインチキくさい風流な古道具屋である。その善造の所へ、高校教師の兵頭が下宿することになった。善造の家の裏手に住んでいる左官屋の安夫は、偶然にも以前の教え子たった。再会を喜びあう二人が、近くの来々軒で食事をしたところ、この店のお琴ちゃんに兵頭が一目惚れしてしまった。活発な下町娘の彼女は、母が病気で寝こんでいるために一人で店をやっていたが、とうとうその母が他界してしまった。近所の人々はお琴の身のふり方を案じた結果、庄吉のところで働いているライオンに来々軒の手伝いをさせることにした。さて、目白の屋敷で仕事をしている安夫は、そこのお嬢さんの里子に恋をした。そんな安夫のことを心配した妹の友子は善造に相談するが、話を聞いていた善造はついにタンカを切った。「そんなに一緒になりたきゃ、さらって来い!」屋敷で最後の仕事の日、安夫は本当に里子をさらってしまった。まわりの大騒動をよそに、安夫は自分の気持ちを、ありったけの情熱をこめて語った。最初は興奮して泣いていた里子だったが、気が落ちつくと安夫の愛を素直に受け入れた。一方、兵頭は、お琴への熱が増すばかりで、来る日も来る日も来々軒通いが続いていた・・・。