1976(昭和51年)/6/12公開 111分
配給:松竹(受託配給) 製作:行動社 / 木村プロ
13歳にして売春宿に売られた少女が、苛酷な運命に耐え生き続ける姿を描いたストーリー。脚本は白坂依志夫、監督は増村保造、撮影を中川芳久がそれぞれ担当している。
秋の四国路の野山に、美しい鈴の音がこだまする。山道を踏みしめていく幼いお遍路の瞳はつぶらだが盲目であった。少女の名はりんという。彼女は四国の山奥で、ばばと二人で野性の子として暮していたが、ばばの死後、瀬戸内海のみたらい島に売られた。りんが13歳の時だった。島でりんを待っていたのは売春という地獄だった。近い将来、りんも春を売る女にされてしまう。彼女は反抗し続け、苦しい時はばばがよく歌った子守唄を歌った。この島では陸地での売春と別に「おちょろ舟」を漕ぎ出して沖に停泊する船での売春があった。りんはおちょろ舟の漕ぎ手を志願した。舟さえ漕げれば、いつの日か島を脱出できると考えたからだ。が、やがて初潮を迎えたりんは、客をとらされた。島で知り合った少年との淡い恋も散った。りんは狂ったように働きつづけた。その結果、視神経を犯されてしまった。それでも、生きる、という望みを捨てなかった。負けるものか、という闘魂がりんの心を支えていた。そんなりんに同情した伝導師が、りんを島から逃がそうと舟に乗せた。四国へ逃げのびてお遍路になれ、という男に向かって、りんは帯をといた。生まれたままの姿で、りんは、男にとも天にも海にとも分らぬまま、汗と涙でよごれた手を合わせた。「うちはただでお金をもらうことはできまへん。どうぞ、うちを好きにしておくれまへ。この恩は、一生、忘れはせんけんな!盲のおりんのこの気持ちを、うけとっておくれまへ」……。
毎日映画コンクール優秀賞:キネマ旬報賞助演女優賞(太地喜和子)