1976(昭和51年)/11/6公開 92分
配給:松竹 製作:松竹 / 文学座
無気力ですべてに自信のない三流大学の学生が、その時々の人と人とのふれあいを通して、人間らしい生き方をつかみとって行くさまを描いたストーリー。脚本は高橋正圀、監督は水川淳三、撮影を丸山恵司がそれぞれ担当している。
矢島鉄男は田舎出身の、都内の私立大学に通う平凡な青年である。彼には進という同郷の友がいる。進は、毎日をなんとなく生きている鉄男とは違って、チンピラのような暮しぶりだが、何となくウマが合った。ある日、二人は女のコをナンパしに車で軽井沢へ出かけた。だが、ドジな二人は、狙ったヒッチハイクの女のコに逃げられた挙句、金持のお嬢さんグループにスカウトされて、男性ヌードのモデルにされてしまった。その上、彼女たちの前で格好をつけたお陰で、借りた車を壁にブツけた。車の修理代は貧乏な二人には大間題である。思いあまって、二人はアキ巣を思いついた。昼下りの人気のない一軒家に忍び込んだ二人は、盗みの最中に、その家の主の柳田老人に発見された。進は一目散に逃げだしたが、鉄男は居直って老人を縛り上げ、逃げるはずみに老人にケガを負わせた。一旦は逃げたものの、鉄男は老人のケガが気になって、薬を買って柳田家に戻ると、縄をほどいて傷の手当てをしてやった。老人は、いきなり「ワシを殺してくれ」と鉄男に懇願した。鉄男はオロオロするばかり。老人は、子供に見捨てられ、生きるのがイヤになった、と語った。その日から鉄男は、しばしば老人を訪ねるようになった。老人の周囲には、何かと世話をやくあたたかい近所の人々がいることを鉄男は知った。その中に、二、三度街で会った薬屋の娘の由起子もいた。鉄男は、そのおだやかな微笑と美しいまなざしに胸がふるえた。柳田老人の様子がおかしくなったのは、鉄男がアパートを追い出され、柳田家に居候を決め込んだ数日後のことである。老人は、数年前に死んだ妻の幻影を見て、しきりにその跡を追おうとする・・・。