1987(昭和62年)/8/15公開 91分 カラー
配給:松竹 製作:松竹 / 磯田事務所
刑務所を舞台に、一筋縄ではいかない懲役たちの日常を描く。安部譲二原作の同名自伝的小説の映画化で、脚本は「大奥十八景」の鈴木則文と梶浦政男の共同執筆。監督は「生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言」の森崎東、撮影は「哀しい気分でジョーク」の坂本典隆がそれぞれ担当している。
前科13犯の安部直也は恐喝罪、銃刀法違反で懲役3年3カ月の刑を受けて服役中。受刑者たちには窃盗前科21犯で、国公立の場所でしか仕事をしない老懲の忠さんこと小山忠造、紙喰いのメエこと山崎明、看守たちにチクる岩崎源吉、色白の二枚目、松沢英二、脱獄の日に備えて毎日ランニングをする革命の闘士、城山勉などかいた。直也の名は“塀の中の文豪”として刑務所の隅々にまで知れ渡っていて、懲役たちにとどまらず看守からもいち目置かれている。ある日、安部は工場での労働で新入りのサブこと飯田三郎と再会した。彼は土産に持ち込んだシャブを安部に渡すが源吉にチクられ、入所したその日から軽塀禁になってしまった。定年間近の看守の鉄っつぁんが、ドク・西畑に腰痛を診てもらいにやって来た。ドクは医師法違反、前科15犯のニセ医者だが、皆の医療を診て重宝がられている。人情家として親しまれている鉄っつぁんと対称的なのが看守長の鬼熊で、彼は何かにつけて安部を目の仇にし挑発する。一方シャバでは、安部の別れた妻、風見待子が経営する赤坂のクラブ“カサブランカ”で、安部の母、春代が安部からの手紙を読んでいた。離婚の原因は安部の浮気だったが、ふたりは別れた今も愛し合っている。針を入手したことが発端で独居房(懲罰房)に入れられた安部は、隣にかつて小菅刑務所で一緒だったオカマの上州河童が入っているのを知る。
日本アカデミー賞新人俳優賞(森山潤久)