1953(昭和28年)/2/25公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
渋谷実の監督作品。原作は獅子文六の毎日新聞連載の小説で、脚本は斉藤良輔で、撮影は長岡博之。製作は山本武の担当。出演者は淡島千景、小沢栄、佐田啓二、桂木洋子、倉田マユミ、ダニー・ウィリアムスやボブ・ブース、その他文学座や俳優座の人々など。
志村亮子は、横浜で「ごしんさん」と呼ぶ元主人筋の未亡人福田嘉代の慈善事業混血孤児収容所を理事として取り仕切っていた。そして収容所拡張運動に東奔西走し、その美貌と才智で成績をあげていた。それに反し彼女の夫四方吉は元腕利きな実業家であったが、終戦と同時に急に虚脱状態になり、無為に暮らし、内緒でパンパンの英文手紙の代書をしていた。そんな夫に不満な亮子の心の隙に、ドゥヴアルという素性の怪しい外人バイヤーがつけ入ろうとしていた。パンパンのバズーカお時は、黒人との混血児トムを収容所に預けていたが、純真な黒人兵シモンから金を捲きあげる道具にこの子を使い、シモンはトムが自分の子だと信じていた。亮子の同窓生大西説子は産児制限運動をやり、同郷人のプロ野球選手赤松太助の後援者をもって任じていた。太助には横浜駅でシューマイ売りをする花咲千代子という可憐な恋人があった。軍の移動で浜のパンパンも姿を消し、四方吉も失業したとき、新興財閥武智秀三に見込まれ、そのキャバレーを手伝うことになり、これを機会に日頃彼を無能呼ばわりする亮子の許を黙って去った。亮子は四方吉に黙って去られるとさすがに気がかりになる、ドゥヴアルの誘いにも気乗りがしないのだった。四方吉は武智のため、新しく観光客相手の大娯楽場設置の土地買収の交渉をした。その相手がドゥヴアルだった。ドゥヴアルは手金と称して半金を受け取って海外へ逃げてしまった…。