2006(平成18年)/6/10公開 126分 カラー ヴィスタ
配給:松竹 製作:『やわらかい生活』製作委員会
『ヴァイブレータ』で各賞を受賞した、監督、主演女優による第2弾。当人には大きな出来事だが、他人にとっては大事件でもない日常のできごと。前作同様、そんな日々に起きる微妙な心のひだを描いた本作だが、やはり最後まで画面にひきつけられる魅力に満ちている。寺島しのぶは、毎度ながらスーパーの買い物袋を下げて近くの商店街を歩いてそうな、身近でリアルな人間を演じるのが実にうまい。初めは脱力してノホホンと気楽そうに生きている彼女の姿だが、やがてそれがうつ病である自分に負担をかけないためのものだとわかってくる。そんな彼女にかかわり合う男たちはみな優しく、彼女を癒してくれる(なぜか女性はいない)。とくに愛嬌のあるダメな四十男を演じる豊川悦司は、女性なら誰もがこんな男にそばにいて欲しいと思う存在だろう。登場人物に対する眼差しはとても暖かい。やさしい気分になれる2時間だ。
肉親や恋人、友人を失い、すべてに無気力になって入退院を繰り返すようになった橘優子・35歳。そんな彼女が東京の片隅にある街・蒲田に引っ越してきた。この町は下町だけど”粋”がない。しかし今の彼女にとってはとても居心地がいいところだった。大学時代の友人で大田区長を目指す本間、ネットで知り合った”趣味がいい痴漢”、まだ幼さの残るうつ病のヤクザたちと知り合い、時には癒され合う優子。ある日、福岡からいとこの祥一が優子のアパートに転がり込んでくる。ダメ男ながらも憎めない祥一に、優子は心を開いていくが…。