2009(平成21年)/10/10公開 112分 カラー ビスタ 映倫番号:118454
配給:東映 製作:2009「さまよう刃」製作委員会
「秘密」で第52回日本推理作家協会賞、「容疑者Xの献身」で第134回直木賞を受賞し、他にも「流星の絆」「手紙」など映画・ドラマ化作品で大ヒットを連発している作家・東野圭吾。そんな東野作品の中でも問題作と位置づけられている「さまよう刃」は、少年法と被害者感情の乖離など社会に対する問題提起がたちまち話題となり、現在までに150万部を越すベストセラー記録を樹立。映像化不可能と言われながら、最も映像化を熱望されていた作品がいよいよスクリーンに登場する。
「獲物、見っけ」
深夜の路上を徘徊する乗用車に、引きずり込まれる少女の悲鳴が、闇に吸い込まれていく――翌朝、荒川べりで、無残な制服姿の死体が発見される。事件現場に駆け付けた刑事、織部孝史(竹野内 豊)と真野信一(伊東四朗)は、死体に強姦と薬物注射の痕跡があることを知る。少女の身元が判明、長峰重樹(寺尾 聰)の中学生になる一人娘・絵摩であった。連絡を受けた長峰が、遺体安置室で変わり果てた娘と対面する。憔悴、落胆、遣り切れない無念。妻を亡くし、娘の成長だけを楽しみに生きていた長峰は、生きる目的すら失って失意のどん底へと突き落とされた。絶望と無気力の日々。その彼の家の留守電に、謎の人物からメッセージが入る。
「絵摩さんはスガノカイジとトモザキアツヤに殺されました。トモザキの住所は・・・」
警察から捜査の進展状況も知らされず、苛立ちを覚えていた長峰は、疑念を抱きながらも、伴崎のアパートを訪れる。主が不在の部屋で長峰が見つけたビデオテープには、絵摩を力ずくでレイプする、人間の姿をした怪物、伴崎と菅野の姿が映し出されていた。この世に、こんなにまでの理不尽な不幸、無慈悲な悪があるのだろうか。激しい慟哭と怒りに駆られた長峰は、やがて帰宅した伴崎の腹部に、その場にあった刃物を突き立てた。「菅野はどこだ・・・」姿を消す長峰。
やがて、捜査本部の織部と真野の元に、長峰から、伴崎殺しを自供する手紙が届き、現場から発見された指紋から、長峰の犯行と断定される。長峰の手紙には、未成年者ゆえに与えられる刑罰の軽さを憂い、自分はどうしても彼らを許せないと心のうちが書き綴られていた。長峰の心情に同情以上の何かを感じた織部は、真野に激しく詰問する
「結局、われわれ警察がしていることは、菅野のような者に更生するチャンスを与え、長峰さんのような被害者の未来を奪い取っているだけじゃないんですか」
「長峰にはもう未来なんてないんだよ」
真野の一言はこの上なく重く、織部の心に響く。
伴崎殺しの犯人として全国に指名手配されたころ、長峰は長野の山中にいた。伴崎が口にした「長野のペンション」という一言を頼りに、菅野の後を追っていたのだ。菅野の写真を見せ、一軒一軒尋ね回りながら、やがて廃屋と化した一軒のペンション跡に辿り着く長峰。一方、伴崎のアパートから出た証拠品のビデオテープの映像から、織部と真野も菅野の潜伏先を長野に絞り込み、同じ廃屋へと向っていた。
運命の哀しい糸に手繰り寄せられるようにして、対峙する長峰と織部・真野。やがて、やり場のない憤り、世界の不条理に衝き動かされ、物語は衝撃の結末に向けて、加速していく――