1955(昭和30年)/9/13公開 102分 モノクロ スタンダード 映倫番号:1923
配給:東映 製作:東映
神の如き善意を抱きつつあらゆる世人の嘲弄と迫害とそして貧苦の中に、妻との愛情一途尚且つ自ら厳しく絵画道に生き抜いた又平の半生を描く。思わず微笑を誘う彼の奇異な人生の中に、切々と胸を打つ善意と愛情と哀愁、烈日を思わせる芸道への情熱を描いて感動を呼ぶ珠玉の名篇。
文部省特選映画
京都で土佐派と狩野派の画壇が互いにしのぎをけずっていた頃、土佐派の当主・将監の高弟であった又平は、生来の吃音で人から小馬鹿にされていたが、その画風は一般にも理解されないまま、土佐派でも狩野派でもない戯画風の一派を成しており、絵以外の世辞には子供のように疎い善人であった。将監の娘・小夜路は小さい頃から又平が面倒を見て可愛がっていたが、当の小夜路は風采の上がらぬ又平を嫌っていた。ある日城南宮へ藤を描きに行ったところ、小夜路が狩野派の当主・清源の馬鹿息子・清四郎らと一緒に騒いでるのを見た又平は、鯰を放り投げて慌てさせる。目明しの藤六が又平を捕らえようとするが、祇園芸者の卯の喜代の機転で救われた。又平は助けてくれたお礼に卯の喜代の肌に刺青の下絵を描く約束をした。やがて、小夜路を清四郎の嫁にと清源から申し入れがあった。これを聞いた又平は清源の家に断りに行く一方、小夜路には三井財閥の世継ぎで律義者の庄之助との婚約を纏めた。又平の誠意に今までの非を詫びる小夜路だったが、密かに小夜路を想っていた弟弟子の修理之介は又平の行為に嫉みを感じ、卯の喜代の肌に下絵を書いたことや又平に好意を寄せる女中・徳江との間を中傷、又平を破門するよう将監に迫る。将監も真意を知りつつ、周囲の状況から又平を旅に出す以外に手段が無かった。徳江と共に旅出た又平は大津でささやかな式を上げるも、又平の変った絵はなかなか売れず…。