1956(昭和31年)/7/5公開 67分 カラー スタンダード 映倫番号:2280
配給:東映 製作:東映
劇作家・北條秀司による原作を映画化。女の執念、恋慕、嫉妬、そして親子の深い情愛を描き、元禄時代の艶麗な風俗を背景に、凄まじい恐怖と美しい幻想の世界が繰り広げられる。
精霊送りのお盆の夜。水面に男女の姿が浮かび上がる。女は伏見橦木町の遊女・薄雪太夫、男は呉服屋の手代美之助。二人は末を契った仲だったが、積もる逢瀬で店の金を使い込む美之助に対し、それを達引く薄雪の借金がかさむ一方であった。しかも欲に目が眩んだやり手のおくにや、薄雪を強引に身請けしようとする鰯大尽の横車により追い詰められた二人は心中を図ったのだが、美之助だけが一人生き残ってしまい、薄雪だけが帰らぬ人になってしまう。母・おときの慰めも美之助の心には虚ろに響くばかりで、何度も後を追おうとして叶わぬまま三年が過ぎた。漸く呉服屋として立ち直る決心をし始めた美之助は、ある日、百万長者・丹後屋の娘・お花と知りあい慕われる。すぐに縁談が持ち掛けられ、薄雪に義理立てして始めは断っていた美之助も、病身の母を思い断りきれず、ついに応じることとなった。契りの夜、薄雪の遺品である懐ろ鏡を手にした美之助は、鏡の中に薄雪の怨みの姿が写るのを見て愕然とする。薄雪への想いも断ち切れず、夫婦となっても契りを交わせないまま、日々やつれていく美之助。お花に横恋慕する丹後屋遠縁の竹之助は、丹後屋の身代をとの下心から美之助を遊里に連れ出すが、美之助はただ独り酒をあびるのみ。やがて美之助が目覚めた場所は「雪巴」。そこはかつて、薄雪と睦言を交わした遊女屋であった…。