1957(昭和32年)/1/15公開 79分 モノクロ スタンダード 映倫番号:2618
配給:東映 製作:東映
市川歌右太衛門のお家芸、退屈男が江戸に登場。邪宗教団の大陰謀をめぐって絢爛多彩の波乱が展開、美貌の姫君を求めて正邪入り乱れる痛快篇。
江戸の初春の夜。三人連れの五楽、円太、弥八が異様な声を聞き、酔いも手伝って探った三人は、そこが噂に高い緋龍閣と知り、吃驚仰天。怖々忍び込んだ庭先で、図らずも聞いた行者・神坂道節と信州高遠藩の江戸家老・秋山主膳の密事とは…?国表より失踪した信州一の大分限者である手代木家の息女千代乃の消息を求めんとする厳しい詮議の問答だった。緋龍閣とは、大名・豪商を相手取り、不思議な霊権を振るって、事件を占う奇怪なる魔教一団の本拠。逃げ出した三人は、その途上、平川鉄心斎、有村弥九郎らに襲われる。この窮地を救ったのは、退屈男・早乙女主水之介だった。さらにその救出劇を見守る謎の前髪少年がいた。翌日、主水之介の活躍を頼ってか、昨夜の謎の少年、実は行方不明の千代乃がその身分を秘して早乙女邸に匿われる。千代乃失踪と共に信州を発った千代乃の父・手代木五左衛門と祖父の九左衛門は、緋龍閣に道節を訪ね、その神力に縋った。事件の裏におどる藤崎平九郎の素性を怪しんだ主水之介は、茶の師匠・松沢秀甫の家に彼が潜む事を知るが、扉は固く閉ざされ、主水之介の来訪にも答えない。そのため、やむなく緋龍閣を訪れる主水之介。初めて道節と対面し、事件の核心を掴もうとするが、意外にもそこには、上様発熱の回復祈祷に狂う御生母・桂昌院の姿があった。何も掴めぬまま、帰宅した主水之介を大目付堀田備後守が閉門の上意を携えて待機していた。その苦境を見かねた主水之介を慕う源兵衛長屋のお栄の子・三平は、福沢邸に目をつけて忍び込むが、逆に捕らえられ道節のもとへと連れ去られる。そして、お栄までもが三平を人質に、主水之介を毒殺するよう強要される。藤崎、福沢、そして道節、疑うべくもない一味のつながり、主水之介の目に狂いはなかった。翌朝、お栄の死体が堀にあがる。主水之介の毒殺を拒んだ故の道節の所業だった。道節こそ由井正雪の遺児縫之助で、桂昌院の狂信を通じて幕府の機密を探り、一挙徳川の潰滅を狙う反逆の徒であった。その緋龍閣をその巣窟とも知らず、千代乃失踪に騒ぎ立てた手代木一家と信州高遠藩…。道節一味は、徳川潰滅の軍資金に、手代木の財宝を狙っていたのだ。主水之介を堕とさんとする道節の奸計も、老中・土井大炊守は、主水之介の信頼に応えて閉門の罪を赦免した。これを知った道節は、手代木九左衛門および五左衛門を緋龍閣に誘い、千代乃探索金として三万両を強要する。緋龍閣に呼び出されたことを知った千代乃はこれを主水之介へ急報し、すべての事情を明かす。憤りに燃える早乙女主水之介は夜の緋龍閣へと駆けつける。乱闘、そして血闘。折から狂い舞う紅蓮の炎の中で、遂に道節を斬り伏せる。時に天突く大爆発、緋龍閣は炎の海に呑み込まれていくのであった。
「旗本退屈男」シリーズ(20)