1960(昭和35年)/2/7公開 87分 モノクロ シネマスコープ 映倫番号:11531
配給:東映 製作:東映
御用提灯、十手の波をかいくぐり、大名屋敷の屋根から屋根へ、神出鬼没の義賊鼠小僧次郎吉の活躍ぶりを大川橋蔵が颯爽と演ずる痛快娯楽時代劇。
賭場通いの悪事がバレて百叩きの刑にあったちんぴらやくざの次郎吉は、端唄の師匠文字春の介抱で元気になると、性こりもなく仇討ちとばかりにまた賭場通いを続ける。
だが、ツイてない時は仕方のないもの、またもやスツてんてんになって、やけのヤンぱち、奥女中の寝顔でも見てゲンをつけようと、大名屋敷に忍び込んだ。
次郎吉がその屋敷で見たのは病に伏す御中臈だったが、その顔は故郷で次郎吉の帰りを待つおたかそのものだった。
苦しい息の下からさとす御中臈の言葉に、次郎吉はその日のうちに江戸を発った。
しかし、次郎吉の目に映じたのは飢饉にあえぐ東北の農村、おたかは十両の借金の形に身売りされるところだった。
泣き叫ぶ弟の吉五郎をしっかりと抱いたおたかは、怒りに身をふるわせて立つ次郎吉を見て「兄いちゃん」とその胸に飛び込んだ。次郎吉はおたかと吉五郎を連れて故郷を発つと江戸に向った。
道中、権の案内で次郎吉の後を追って来た文字春と会い、おたかは酒に酔った文字春を面に受けて、書置きを残して飛び出してしまった。
必死になって探す次郎吉は涙に声もない吉五郎を、江戸に行ったら必ず会えるとやさしくさとした。
江戸に着いた次郎吉は、再び御中臈のもとに忍び込み、わけを話して一日だけの姉となってもらう約束をする。
約束の日、烏森稲荷に吉五郎を連れて行列を待つ次郎吉は、御中臈に殿のお声が掛って出られなくなったことを知らなかった。
しびれを切らして屋敷の前まで来た次郎吉だが、突然駈け出して来た二頭の馬にハネられ、吉五郎は死んでしまう。しっかりと弟の体を抱いた次郎吉は、馬が御中臈の代参ということを知って、激しく復讐を誓うのだった。
その数年後、次々と大名屋敷の御金蔵が破られた。夜の大江戸に不気味な呼子が響き、御用提灯と十手の波が、鼠の様に屋根を伝って逃げる盗賊を追った。鼠小僧……おたかを失い吉五郎を失った次郎吉の復讐の姿だった。次郎吉は、ある日、出前持になって働く権に出会った次郎吉は、が責任を感じて遊女に身を落しおたかを探しているという事を聞いて胸を打たれ、身請金を権に渡して文字春のもとに急がせた。
文字春と久しぶりの再会を喜びあった権は、そこへ茶をはこんで来た女中を見て驚いた。おたかだった。狂喜した権は、おたかの身請金が不足していることを知って、“鼠小僧次郎吉だ”と啖呵を切ったが、女将の裏切りであっさり御用となってしまった。十手をあずかる土地の大ボス桝安は、功名心にかられて三人をオトリに次郎吉を捕えようとしたが、田舎やくざの渡世人に化けて桝安一家へ乗り込んだ次郎吉は、三人を逃がし、怒り狂う桝安一家に必殺のドスをふるって、追手を絶った。
おたか、文字春、権と落ちあった次郎吉は、三人に天下の兇状持ちのお尋ね者の自分と、すっぱり縁を切ってくれと涙ながらに語ったが、激しいおたかの愛情と「三年、三月、たった三日でもおたかさんの想いを遂げさせておやり」という文字春の言葉にはげまされて、しっかりとおたかの手を握るのだった。