1960(昭和35年)/2/23公開 59分 モノクロ シネマスコープ 映倫番号:11573
配給:東映 製作:東映
東映時代劇の青春オールスターが血と剣と愛の嵐を呼ぶ、直木三十五の不朽の名作「南国太平記」の完結篇。物情騒然たる幕末を背景に、怪奇戦慄の呪文に秘められた島津七十七万石の家督相続をめぐって、熱血の志士、義侠のスリをはじめ、美女、奸婦、修験者、刺客、悪臣など絢爛多彩の登場人物が、江戸から薩摩まで追いつ追われつの陰謀絵巻を繰り広げる。
薩南の空を覆う暗雲は血なまぐさいお由羅一派の陰謀をのせて江戸にある斉彬の身辺に刻々と迫っている。
義観和尚の厚意によって比叡山中のとある草庵に、綱手と妹・深雪の厚い看病を受け、身の深傷と父・八郎太を失った心の傷を癒す小太郎にとってそれは悲憤と焦燥の毎日であった。
仙波父子の悲運を知って、お由羅派の暴逆ぶりに怒りを爆発させた休之助と庄吉は、かねてから臭いとにらんでいた将曹と調所が共謀し禁制品の密貿易で私腹を肥やしている事実を御公儀に上訴して一派を潰滅させようと、たまたま将曹に呼び寄せられて江戸屋敷へと向う調所の行列から証拠の手文庫を奪う。
時を移さず老中差向けの使者が島津藩江戸屋敷に飛んだ。しかし将曹は調所を謀殺してこれに罪を被せるという老獪さを発揮し、逆に腹臣の四つ本、月丸たちに命じて斉彬派に弾圧を下すのだった。激怒した休之助たちは久光暗殺の策を練る。傷ようやく癒えた小太郎が江戸に戻って来たのはそんな折であった。
久光暗殺を買って出た小太郎は、小金ケ原の狩場に鷹狩りの久光を待ち受ける。しかし、お由羅の方の陰謀を露知らぬどころか、斉彬の人格に心酔し、かえって斉彬の身の安穏を願って小太郎の刃の前に命を投げ出す純粋な久光を、小太郎はどうしても斬れなかった。そして牧の呪法こそ陰謀の根源だと悟った小太郎は固い決意のもとに再び牧を求めて旅に出る。
その頃、お由羅の方は久光の身を案じて国許に呼び戻すと同時に牧に命じて斉彬の調伏を急がせ、斉彬派の弾圧を更に強化した。国許の情勢の険悪化を知った斉彬は、自から内紛の鎮圧を決意して江戸を後にするのだが、秘かに身を隠して調伏の呪法を開始した牧の邪術によって道中病に苦悩する。
邪道に走る牧の呪法を快しとしない同じ修験者の加治木玄之進は、小太郎に呪法の行える山は越後の黒姫、京の比叡、薩摩の烏帽子の三山しかないと調伏の祈祷所を教え、自からも邪術を破らんと延命の逆法を以って対するのだが力尽き、牧の邪術に倒れてしまう。
瀕死の重病に苦悩する斉彬を迎えた西郷吉之助ら国許の斉彬派の面々の表情にはお由罹派に対して堰を切って流れ出さんとする激怒の表情がある。しかし、苦しい息の下から、大きく移り変ろうとしている世相を説いて、内紛に命を捨てる愚かしさをさとす斉彬であった。
噴煙天をつく烏帽子岳頂上ではついに牧の祈祷所を探し当てた小太郎と、剣術者の意地に賭けて牧を殺させまいと立ちはだかる月丸の激闘がいつ果てるともなく繰り広げられていた。小太郎を助けて将曹一味を相手に奮闘する庄吉の表情には悲壮感がみなぎり、邪術の生贅から逃れようと必死でもがく綱手の顔も恐怖に歪んでいる。だがそこに深雪の知せを聞いた益満たちが駈けつけ、奸臣、忠臣入り乱れての正邪の闘いはますます凄烈さを極めていった。
「南国太平記」シリーズ(4)