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人形佐七捕物帖 血染の肌着

Cases of Ningyo Sashichi Pt.3

1960(昭和35年)/7/31公開 61分 モノクロ シネマスコープ 映倫番号:11857 
配給:東映 製作:東映

若山富三郎主演の捕物シリーズ第三話。葛龍詰め殺人事件から端を発し、大名屋敷の名に隠れて麻薬密輸と人買いを行う悪家老を相手に、人形いれずみの名推理も颯爽と宝禅流棒術を唸り飛ばすお玉ヶ池の名目明し・人形佐七の大活躍を描いた娯楽推理時代劇。

人形佐七捕物帖 血染の肌着
(C)東映

ストーリー

月冴える大江戸の夜――ここ向島附近の河原で釣をしていた人形佐七親分と子分の辰五郎、そして佐七の恋人・お照の三人は、川面に葛寵が一つ浮いているのを見た。不審を抱いた佐七は、早速に引上げてみて驚いた。葛龍の中は、髪も崩れた娘の死体、肌着一枚の姿も無惨にしかも鮮血にまみれていた。
翌日、佐七は大名下屋敷が並ぶ例の河畔を絵地図片手に歩いていた。その横を通り抜ける駕寵から一瞥をくれる榊原家侍医・熊谷玄齋は「人形佐七!」と低く呟くのだった。
佐七はそのまま南町奉行所に与力の神崎甚五郎を訪れ、大名下屋敷に不審な点があることを述べて力添えを頼んだ。
夕刻、葛寵詰め殺人事件を大きく取りあげた瓦版を片手に佐七の家を尋ねて歩く田舎娘の姿があった。しかし佐七の家をやっとの思いで探しあてたものの佐七に会うことなく何者かの手によって刺し殺されてしまった。のみならず、どさくさにまぎれてお照までがさらわれてしまう。口惜しがる佐七だが、家を取巻く様にして見張るごろつきたちのために動きが取れなかった。しかし天井から忍びこんできた船頭の市公の助けを借り、佐七はどうにか見張りの眼をくらまして抜け出すことが出来た。
一方お照は、榊原家下屋敷の土藏に押し込められたが、そこに同じ様な境遇の娘が多勢いるのを見て不吉な予感をおぽえるのだった。
果して、安保連と称する人買い業者が侍医・玄齋と組み、奥方の御園生をたぶらかし、大掛りな麻薬密輸と人買いを行っていたのだった。この事は榊原家当主・織部正とて気付いてはいたが、病床に伏す身でどうしようもなかった。
事態が急を告げる中、佐七はお照を救い出すべく下屋敷に向った。そこで同じ様に囚われていたお君を救い出し、榊原家下屋敷こそ暗黒の巣である事の確信を得た。
佐七はお照とお君を預かって貰うため神崎邸を訪れた。そこで佐七はのっぴきならぬ理由で十手をとられた事を激しく叱咤された。「そんなに叱らなくても…」と、可愛い眼で抗議するお照。走り去る佐七を見送りながら神崎は、「佐七は利口な男だ。後でしめたと思うよ。」と笑いながらつぶやいた。
「十手がなければお上の仕事をしてはならねえ、となりゃや俺は女に甘くて喧嘩に強えただの暴れ者だ」と佐七は呆っ気にとられる辰五郎と市公をケシかけて船宿の若い衆を集めさせた。
辺りは闇夜。ここ榊原家下屋敷の庭にはおびえきった女たちが引き出され、その周りを囲むように大勢の侍やごろつきたちが控えていた。やがて水門が開くと一般の舟が!そして中央にすっくと立つ人形佐七!てっきり安保連が娘たちを引き取りにきたと思った玄齋らはすっかり慌てふためいた。しかも安保連一味は、船宿の若い衆のために珠数つなぎになって別の舟に乗せられていた。「旗本邸の名の下にかくれたとんだ人買い野郎め!」向う鉢巻、手に手に櫂を握った喧嘩支度も甲斐甲斐しい若者たちの前に立ち、佐七は宝禅流の棒を持って邸の中に躍りこんだ。一斉に抜刀するごろつき侍たちに、「だんびら怖くて喧嘩を売れるか!」と若者たちも佐七の後に続いた。邸内に大乱闘が繰り広げられた。唸り飛ぶ佐七の六尺棒が次々にごろつき共をやっつけ、玄齋をも叩きのめした。とその時、絹を裂く様な悲鳴が聞えた。佐七は急いで座敷に駆けつけた。そこで見たものは、血刀を下げてよろめき立つ織部正と、血に染まって倒れている御園生だった。「俺は旗本だ。旗本は悪人を妻とはせぬ!」そういうと織部正はいきなり手にした血刀を我が身に突きさした。
折から捕方を従えた与力・神崎甚五郎が残る悪人一味を一掃した。
「大分派手にやったなあ。」神崎はそういうと佐七に笑顔を送った。駈けつけたお照も佐七の無事な姿を喜ぶのだった。
明るくなった堤の上を家路に向かう三人。朝陽が眩しい光を投げかけていた。

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