作品検索

作品紹介

清水港に来た男 

The Newcomer to Shimizu

1960(昭和35年)/7/31公開 92分 カラー シネマスコープ 映倫番号:11826 
配給:東映 製作:東映

大政、小政の声がする清水港にやってきた愉快な風来坊の正体は?大川橋蔵が二枚目半に扮して巻き起こす事件の数々。笑いと恋と涙を交えて描いた娯楽時代劇の傑作。

NO IMAGE

ストーリー

ここは清水港に近い東海道、富士のお山も日本晴れ、明るい茶摘唄を背に一見して旅の風来坊と見える男が一人、いかにも疲れた足取りでふらりとやって来た。
折から茶摘唄は“蛙が鳴くんで雨ずらよ”のくだり、この男すきっ腹の憂さ晴らし「何が雨ずらってんだ空を見ろ」と茶摘女を怒鳴りつけたまではよかったが、とたんに轟然と降り出すにわか雨、慌てて駈けこんだ清水の町中のしもた屋風の軒先。道行く人のロからこの家の主は清水一家の六助と分ったが、のぞき込んだ家の中には、御馳走にお銚子まで用意された無人の膳が食欲をかき立てる。
この男、泥棒猫を追っぱらおうと家に入ったのが間違いのもと、主の六助と女房おすきが帰った時には、ちやっかり酒に酔って御気嫌だ。
ところが、この六助は通称抜け六という少々足りない男で、軒先で聞き込んだ六助という名をこの風来坊から呼ばれて、すっかり友達と思い込んでしまった。
二人は忽ち意気投合、この風来坊の政吉は六助の家に居候をきめ込もうというがめつさ、それがもとで六助は女房おすきと大喧嘩の末に家を飛び出す仕未だ。
政吉は犬に吠えかかられた一人の娘を救い、「おれに惚れちゃいけねえぜ」と自分から云い出す厚かましさ、とんだ風来坊だ。
六助と政吉は、なんとか次郎長一家に三下として住み込んだが、先に救った娘がなんと次部長親分の義理の妹・お雪とわかり飛び上って驚いた。
次郎長一家の三下には、ドモリの熊造ことドモ熊をはじめ人の良い男ばかりで風変りな政吉をめぐって一家は珍騒動の連続だ。
折も折、次部長親分のもとへ小松村の七五郎が駈けつけ、名物男の石松が都鳥一家に闇討されたという凶報をもたらした。
次郎長親分は、直ちに主だった乾分をひきつれ石松の仇討旅に出掛けるが、石松と仲の良かった三下の角太郎も一行の中へ加えられていた。
この角太郎は、女房・お袖と子供のため堅気になろうと決心していた矢先だったのだ。
ところで、次郎長の留守中、都鳥の身内の鳶の山の為五郎一家が殴り込みをかけてきたが、留守を預かる政吉は戦わずして木の上に逃げ登り、奇策を用いて為五郎一家を撃退して大いばりだ。
この後政吉は、お雪のお供をして旅に出た乾分の家へヘッピリ腰で米俵を届けたが、その途中、たまたま為五郎一家と出会って大慌て、悲鳴をあげて逃げまどいながらも、何時の間にか一家全員をのしてしまうという珍活躍を繰り広げた。
やがて次郎長一行は都鳥を討ち果して清水港に帰って来たが、角太郎と喜三郎の二人は遺骨となって帰って来た。夫と角太郎を失ったお袖は、見栄も外聞も忘れて次郎長を責め、嘆き悲しんだが、このお袖とうなだれる次郎長を見つめる政吉の目は妙に鋭かった。
ときに政吉はお雪から弱虫といわれたのに腹を立て、通りすがりの見るからに強そうな侍に喧嘩をふきかけたが、この侍、実は政吉の友人だった。風来坊と侍とは一見妙な取り合せだが、政吉も実は跡都政之進という侍で、桂小五郎の密命を受けて次郎長の真意が勤皇にあるか佐幕にあるかを探りに来た勤皇の志士だったのだ。
ところで、政吉の身を心配したお雪が二人の後を追って来たものだから、政吉はまたまた木の上によじ上りお雪の目を誤魔化そうと、懸命の弱虫芝居に冷汗をかくという有様だ。
ここで政吉は次郎長の真意を打診する最後の手段と、清水の祭りを利用して石松殺しの芝居を一家の三下で上演しようと決心した。
石松役は当の政吉、舞台で大見得をきりながら、やくざ喧嘩の空しさと、勤皇の尊さを説く政吉に次郎長は憤然と席を蹴る。だが、この芝居に忽ち反応を示して、次郎長からは一切いかなる喧嘩もまかりならぬという云いつけが出された。
この喧嘩さし止めをいいことに、折から為五郎一家が勢力を盛り返し、政吉の親友ドモ熊が斬り殺された。
政吉は、遂に次郎長親分に直接当ってその真意を確かめようと部屋に乗り込むが、さすが次郎長だけあって政吉の素姓を見抜き、勤皇派との協力を約束する。
次郎長の言葉を聞いて政吉はニッコリ笑うや、そのお礼返しにと六助と共に為五郎一家へ敢然と殴り込んだ。
今は勤皇の志士・跡部政之進に戻った政吉の長脇差は、初めて快心の冴えを見せ、新選組くずれの用心棒をはじめ、一家を斬りまくった。
清水港に討幕の東海道征討軍の大行列が日本晴れの富士を背に堂々と差しかかる。
その一隊の先頭、馬上豊かな官軍姿の偉丈夫は、かつての政吉の晴れ姿だった。
見守るお雪に次郎長、そして今は元のサヤに納まった六助とおすきの顔も日本晴れだが、折から聞える茶摘唄の“雨ずらよ”の声を聞くや馬上の政之進が背後に向って雨具の用意を命令する。間もなく轟然と降りはしめたにわか雨に政之進は大得意でそり返って馬を進めるのだった。

NO IMAGE
ページの先頭へもどる
一般社団法人 日本映画製作者連盟・会員(4社)