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黒部谷の大剣客 

The Swordsman in The Golden Valley

1960(昭和35年)/8/28公開 86分 カラー シネマスコープ 映倫番号:11889 
配給:東映 製作:東映

珍らしく拳銃と剣を駆使する市川右太衛門が、秘境黒部の大自然を背景に雄大勇壮なスケールの大活躍を展開するスペクタクル時代劇。黒部大渓谷に巻き起るゴールドニラッシュをめぐり、凶悪な士族、山師、唐人、勤皇、佐幕そして平家落人の一族らが入り乱れて死闘の渦中に単騎乗り込んだ平和を愛する浪人の活躍をダイナミックに描く痛快娯楽篇。

黒部谷の大剣客 
(C)東映

ストーリー

夕陽に赤く染まる空の下、荒涼たる高原を遥かに行く騎馬一騎…馬上悠然たる偉丈夫は浪人・一色左近である。
ここはゴールドラッシュに湧く秘境黒部の大渓谷。やがて左近は殺伐とした雰囲気に新開地の荒々しさを感じさせる望山楼に馬を乗りつけた。時を同じくして馬の背にしがみつくようにして乗りつけた男の背には、毒矢が突き剌っていた。男は金鉱に憑かれた山師で、その背の毒矢は凶暴な士族・川鳩一族が放ったものなのだ。その夜も幕府の黒部屯所は、川鳩一兵の奇襲を受けて多数の死傷者を出していた。
幕府の役人と士族・川鳩一族と共に金鉱を狙うもう一つの勢力、それは望山楼にたむろする山師の一群だ。
贋金造師の雲右衞門、ビッコの風来老人、放れ駒の金太、傷の五兵衞ら、いずれも一くせも二くせもある面構えの山師揃い。しかも望山楼の女主人お蘭は、この山師たちをアゴで使うという凄腕だ。
いわくありげな革袋を肩に望山楼に入った左近は、いきなり山刀を投げつけられるという荒っぽいあいさつを受けるが、左近もさるもの腰の拳銃抜く手も見せず、鮮やかな早射ちでその柄を打ち抜いた。
翌朝、左近は単身望山楼を出るや山峡の道に馬を進める。後を追う山師の金太。だが左近は黄金の谷への道とは違う別の山道に馬を進めるのだった。
この左近の行手に不安の目を見開らいて立ちすくむ男装の美女。この娘・早苗は地誌学者であった父の遺志を継いで兄の伊織と共に秘境黒部の地図を完成させるためこの谷に入ったものだが、兄・伊織は重傷を負って難渋していたのだ。
左近は、伊織が近くの平家落人部落の一族に撃たれたことを聞き、平家部落にも黄金の谷へ通じる道があると睨んだ。
手厚い看護を受けた伊織は、自分が調べ上げた黒部大渓谷の地図を左近に差し出すのだった。
この頃、幕府屯所にお蘭が謎の浪人・一色左近の出現を告げに来ていた。お蘭は屯所の隊長・能美の手先を務める女だったのだ。
隊長の能美は麓の代官所へ援軍の使者を立てたが、この使者を一発の銃弾で倒したのは馬車を駆使する容貌怪異な謎の人物だった。そして屯所へ向かわんとする援軍も、たちまち川鳩一族の奇襲を受けて全滅する。
勝どきをあげる首領魔風斉とそれに従う四天王以下一族、どの顔も黄金への執念に魅せられた凶悪な形相だった。地図を手に望山楼へ帰った左近は、翌朝不意に襲いかかった山師の五兵衛らに地図を奪われる。馬を駆って追跡に移った左近は、湧湯の岩場の蔭から突如聞えた女の声にハッと馬首を立て直す。見れば半裸の美女が銃を構えて立ちはだかっていた。この女は平家落人部落の娘・佐里だ。そして山師の辰次は地図を片手に既に射殺されていたのだ。この女の銃を一発の銃弾によって射ち抜いた者がある。ビッコの風来老人だ。だがこの老人、見れば立派に両足を踏みしめて立っているではないか。
風来老人とは実は黄金を軍用金にしようと狙う島津藩鉄砲指南役の勤皇派頭領だったのだ。折から黒部の谷には、暴風雨を予告する不気味な雲が垂れこめはじめる。左近、左里、そして風来老人は山中の洞窟へと急ぐが、猛烈な風雨の中で川鳩一族の襲撃を受け、死闘の末脱出に成功する。左近はこの後、伊織らがひそむ洞窟を訪れるが、伊織の病状の急変に急いで望山楼に馬を返して麓へ医者を呼びに行こうとする。その左近と入れ違いに馬車を望山楼に乗りつけた一人の唐人があった。幕府が派遣した唐人山師の馬占来である。だが先に屯所から代官所への使者を射設した謎の怪人物こそこの馬占来なのだ。即ち馬占来は幕府の名を騙り、川鳩一族と手を結んで黄金を一人占めにしようと狙う黒幕だったのだ。そして山師・雲右門もこの馬占来の手先だったのである。馬占来は雲右衞門を使って、新開地唯一の天水桶に毒を入れ、屯所の役人と他の山師たちの皆殺しを謀る。麓へ馬を走らせる途中、左近はこの馬占来の正体に疑問を抱き、馬首を帰して望山楼にとって帰すや、雲右衛門を一発のもとに仕止め、折から望山楼へ襲撃をかける川鳩一族の銃と毒弓剣と槍との凄絶な死闘を展開する。一方、馬占来は平家落人部落からの黄金の谷への道を進まんと、一隊を率いて部落を襲撃する。これに対し必死に応戦する佐里ら部落の一族、そして一族が今まさに全滅の危機に瀕した時、望山楼において魔風斉以下川鳩一族を倒し、馬を駆って疾風のように左近が現れる…。凄絶な死闘の末、馬占来を倒した一色左近は、革袋に詰めて運んで来た火薬によって、血の争いを巻き起こす黄金の谷を埋め崩すや、再び馬上遥かに秘境黒部を去っていった。

黒部谷の大剣客 
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