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作品紹介

白い粉の恐怖 

Hunting Opium-Eaters

1960(昭和35年)/9/7公開 88分 モノクロ シネマスコープ 映倫番号:11841 
配給:東映 製作:東映

日々の生活と隣り合わせに知らず知らずの間に忍び入る戦慄の麻薬。骨まで溶かすという麻薬の恐ろしさを興味深く誠実に描破する。

白い粉の恐怖 
(C)東映

ストーリー

盛り場の裏側では、犯罪と売春、暴力が巣食い悪の循環を続けており、悪徳は必ず麻薬に結びついているといわれる。麻薬に溺れる中毒者たちは、薬代欲しさに売春し、あるいは犯罪を重ね続ける。凄まじい生活がそこに広がってゆく。
盛り場の暗がりでは、厚生省麻薬取締官たちが一台の幌トラックにすし詰めとなって情報を待っていた。川井組の麻薬密売人・井本と宮川を押えるためだ。麻薬捜査はブツを所持している現行犯以外は逮捕できない。取締官の須川は、情報提供者の朝鮮人・金山を囮に使って報告を待ち、密売現場を襲撃した。宮川とパンパンの中毒女・ユリ子を捕えたものの井本は既に消えていた。
ユリ子は禁断症状に苦しみ、妊娠を理由に釈放を求めた。彼女もまた、宮川に薬を打たれて麻薬の傀儡となった女だ。蒼ざめた顔に痩せこけた体。須川と若い取締宮・桜井はユリ子に捜査の協力を約束させて釈放する。その翌日、金山は彼を狙う井本の暴力を浴びて新宿を追われた。金山は最後の情報として、つるやという飲み屋に売人の出入りがあるらしいと須川に告げた。金山のような囮を使わずに麻薬捜査は不可能であり、囮も殆んどが中毒者である。須川は麻薬Gメンのみに認められた囮捜査の難点に悩んだ。
パンパンのユリ子の客を装った須川は、つるやに踏み入るが、井本の鋭い眼はたちまち須川の正体を見破った。彼等の間には麻薬Gメンの写真が流れていたのだ。この一件で面を撮られた須川は、当分家庭に戻り、久しぶりに妻の滋子に赤ン坊、妻の妹・明子との和やかな日曜日を楽しんだ。一方、ユリ子は、つるやの晩以来井本に狙われていた。須川はユリ子の身の安全を計り、加えて麻薬という罠から解放させようと彼女を千葉の総武病院に入れた。ユリ子も決意して鉄格子のある病院へと向かうが、そこには中毒者たちが、うめき、のたうち廻っていた。ユリ子にも絶息するような苦しみが訪れるがユリ子はその苦しみにも堪えた。禁断症状も取れた彼女の頬は久しぶりに明るい。然しながら完全に癒った訳ではない。麻薬の誘惑はそれほど根強いのだ。ユリ子は須川のために囮の仕事を続けた。ユリ子は須川を慕い始めていたのだ。彼女はヒカリパチンコ店のマスター・田口が大口の密売をしていることを知った。夜の街に田口を探るユリ子は、ふと恐ろしい孤独感に襲われて再び麻薬の魔力に負けてしまった。
田口と「太陽商事」社長・佐伯とのつながりを突きとめた須川と桜井の両取締官は、大和製薬会社の秘書課員に偽装し、ユリ子の手引で田口と麻薬取引を交渉、更に佐伯へと渡りをつけた。会社がピンチなので闇資金調達のためと偽り、用心深い佐伯と田口を納得させたのである。取引は明日、現金で、場所は「かぶと」という料亭。
その夜、須川はユリ子に逢い、彼女が薬を打っていることに気づき怒った。「一回だけ∃」悲痛に弁解するユリ子の顔が蒼い。だが明日は重大な手入れだ。手引きしたユリ子の身の危険を感じた須川は、ユリ子を自分の家に保護した。夫の仕事を理解しているとは云え、滋子にはユリ子の存在がたまらなく腹立しかった。その翌日、須川は取引場所「かぶと」で佐伯に手錠をかけた。それを機に多数のGメンが佐伯邸、太陽商事、ヒカリパチンコ店を一斉に洗った。田口だけが巧みに逃亡した。佐伯邸の内部は麻薬密造工場になっていた。意外にも桜井はそこで金山の姿を見た。囮として協力してきた金山だが逃がすわけにはいかずに現行犯で逮捕した。
逃亡した田口がいつユリ子に復讐しに来るか分らない。苦慮する須川にはもう一つ問題があった。それは金山である。「釈放しろ」と金山が須川を罵る。
その頃、ユリ子は須川の家を飛び出していた。滋子の眼の前で禁断症状に苦しみ始めたユリ子は、麻薬を求めて狂気の如く夜の街に走ったのだ。ユリ子を探し廻る須川に井本が冷たい嘲笑を投げつけた。須川の不吉な子感は適中する。盛り場の騒音が遠く聞える暗がりでユリ子は死んでいた。
青い小さな顔、死因は多量のヘロイン注入によるショックであるという。「他殺ですネ…あの娘は麻薬の打ち方ぐらい良く知っていた筈だ…」須川は暗くつぶやいた。
翌日、ユリ子の死体は火葬された。焼き釜の扉が開き彼女の骨が引き出された。その骨は拾いようもなくボロボロと砕けた。骨の髄まで犯しつくす麻薬の毒。須川と滋子は言葉もなく立ちつくしていた。

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