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あばれ駕籠 

Wild Palanquin

1960(昭和35年)/12/6公開 83分 モノクロ シネマスコープ 映倫番号:12093 
配給:東映 製作:東映

大江戸の人気を二分する義賊・稲葉小僧と役者・中村仲蔵は双生児だった。奇しき運命の糸に操られつつ、人生の二筋を歩む兄弟の美しい交情と活躍を東千代之介の二役で描いた痛快篇。

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ストーリー

鋭く冴えわたる呼笛の音、と見る間に夥しい数の御用提灯が暗夜を染めぬく。「御用ッ!」の声に追われて今宵も甍の波を飛び渡る黒い人影――江戸評判の人気義賊・稲葉小僧新助だ。町方与力・生田慶五郎と目明し徳五郎の必死の追跡を逃れんとした新助は、紀州家江戸屋敷に飛び込んだ。ここでも邸内巡視の藩士たちの詮索厳しく、もはやこれまでと観念の臍を決めたが、中﨟・梶尾の気転に救われる。新助を匿ったことが判ると、梶尾はその責を問われ、お梶と名を変えて侍女・お弥重の実家の蝋燭店松代屋に身を退いた。そこでお梶は、江戸一番の人気役者・中村仲蔵と顔を合わせ、新助と瓜二つの仲蔵に驚く。そして仲蔵もその胸にしっかりとお梶の面影を宿す。
ある夜、物音に眼を覚ましたお梶は枕許に新助を見た。「匿って貰ったお礼とお詫びをしたい」新助の言葉に思わず涙を流すお梶。だが松代屋を張っていた徳五郎の呼笛に呼び戻されるが如く、新助は飛び出していく。屋根から屋根へと捕方の追跡を逃れてある料理屋の座敷に入りこんだ。そこに仲蔵が居合わせ、とっさの気転で新助を追手の眼からくらます。
数日後、お弥重に連れられて中村一座の小屋を潜ったお梶は、雑踏する人込みの中で新助を見つけて胸をときめかした。自分の人気に溺れた仲蔵は、親方団十郎の意に逆らい悉く楯突いて一座を追われる。親方の真意はいつか改心して帰ってくる仲蔵を期待していたのだが…。一座を追われた仲蔵はヤクザ仲間に身を落とし、誰も相手にしなくなるが、浪人・此村大吉は「あんたはいい役者だ。立ち直る日を待とう」と仲蔵を励ます。
一方新助も、今は落ちぶれた仲蔵の家を訪ねた。すっかりやつれた仲蔵に哀れを感じた新助だったが、お梶に思いを寄せている事、その上生き別れになった弟がこの仲蔵であることを知って驚愕する。それとは気付かず不審がる仲蔵の前では笑いに紛らしたものの、新助の心中は激しく動揺した。突如として鳴り響く半鐘の音。「火事だあー松代屋だぞォー」お梶の安否を気遣う新助は一目散に駆けつける。渦巻く紅蓮の炎!怒号!悲鳴!雑踏を極め、凄まじい火の手の上がる中を、新助はお梶の姿を探し求める。座敷の中央で煙に巻かれて倒れ伏すお梶。とそこへ忍びこんできたのはお梶に横恋慕する与力・生田慶五郎の子分たち。「おい、早く運び出せ」松代屋に放火し、そのどさくさに紛れてお梶を浚い出そうとしているのだ。だがその時、「待てッ!」の声と共に新助が飛び込んできた。「火付けは手前ッちの仕業だな!」と激怒する新助。火花散る立ち廻りを演じ、悪人共を蹴散らした新助の耳に「お梶さーん!」と悲痛に絶叫する仲蔵の声。ハッとする新助。このままお梶を仲蔵に預けたほうがと寂しく決意する。復帰叶った仲蔵に割り当てられた役は、弁当幕と蔑まされるものだった。かつての品来役者のこの俺が、と一瞬躊躇うものの「稲葉小僧新助が命を張って、親方に談じ込んできたんだぜ」と自分が舞台に立てる様になった経緯を聞かされて立派な舞台を努めようと心に誓う。からりと晴れ上がった春空の下、初日舞台に向かって足取りも軽く仲蔵を乗せた駕籠が行く。だが街角に差し掛かった時「待てッ!」と一斉に飛び出す捕方陣。「中村仲蔵ッ、実は稲葉小僧ッ、御用だ!」生田慶五郎の下知と共に、驚く仲蔵に縄がかけられようとしたその時、飛鳥の如くとびでた旅姿の新助、「仲蔵をあっしに仕立てようなんざよくねぇ思案だ!」仲蔵を駕籠に乗せて舞台に急がせると、捕方相手に獅子奮迅、男度胸の殴り込み!「手前ッちこそ悪人の中の悪人だッ!」生田慶五郎に激しく詰め寄ると脇差にヒ首の刃をたてた。舞台に立つ仲蔵。新助こそ探し求めた実の兄と聞かされて動揺するが、「兄貴へのはなむけは日本一の舞台を努める事だ」と流れる涙を抑えつつ懸命に舞台を努める。捕方に固まれ奮戦する新助。だが舞台に湧き起こる万雷の拍手を耳にした時、新助の手からヒ首が落ちた。縄をかけられ、引かれてゆく新助をしのび、舞台の上で所作の決った仲蔵の眼から、そして姿をかくして唯一人、旅姿に身を変えたお梶の眼から涙が流れる。

あばれ駕籠 
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